『悪霊のはらわた』‐はらわた旋風は国境をも越える‐

                                 


1981年に公開され、映画にスプラッターというジャンルを確立した生臭い金字塔『死霊のはらわた』は世界中で根強過ぎる人気があることは言うまでもない。はらわたの遺伝子を受け継いだ亜種は世界中で産声を上げ、そして2013年には気合の入ったリメイクが公開され話題となったのも記憶に新しい。
時は同じくして2013年。スウェーデンでもうひとつ、はらわたがひっそりと誕生していた。その邦題も『悪霊のはらわた』。潔すぎて感動すら覚えるこのネーミングセンス。
内容が安易に想像できる親切な邦題以上に内容はまんま『死霊のはらわた』なところがニクい(笑)
権利問題もなんのその「俺たちだって、はらわた撮りたい!!」そんな幼稚な動機を抱いたホラー映画好きに金を握らせた結果がコレなんです。
突然、スウェーデンと言う国に隣町レベルの親近感が込み上げてきた人もいるんじゃないですかね?

陰気で強烈なはらわた魂を集束させて誕生したこの『悪霊のはらわた』の気になるその出来栄えはというと想像以上の良くできた偽物映画で、そんじょそこらの人気映画をまねした恥知らずな偽物どもは志が全然違ことはハッキリ分かります。物語の流れは『死霊のはらわた』通りに謎の小屋に踏み込んだ頭の悪そうな男女が小屋の地下に眠る得体の知れない怪物の力によって発狂し、噛んだり体液をかけたりしてドンドン感染して仲間を増やし、生き残りチームと感染チームに分かれて勝手に殺し合いを始めてしまう点で見れば同じですが、この『悪霊のはらわた』の凄いところは、超低予算という哀しい事実を微塵も感じさせない手抜きの無い人体破壊は一見の価値あり。
特に女性陣の目を見張る活躍ぶりに思わず早送りボタンを押したくなるほどである。

控えめな黒髪の女の子も目玉をぐるりと回転させて血涙、吐血、そして血尿(これは新しい!!)上から下まで赤黒い血に染まり白目を剥き出して(リメイク版では廃止された白目演出を逃さないこの監督はエライ!!)お友達の上唇をダイナミックに噛み千切る姿にこの監督の撮りたかったものの全てが詰まっていると言っても過言ではない。ただグロいだけでなく本棚が必殺武器になるところも面白かったし、クライマックスでは全ての元凶である地下に潜む怪物(ルックスはパサパサに乾燥した弱そうなゾンビ、しかも何と女の子!?)が這い上がって来るんだけど、コイツは目が合った相手の魂を抜き取るというファンタジーな反則技を持っているため、生き残った主人公は目を閉じたまま闘うことを強制される展開といい…これは本当に予想外過ぎる歯応えのある一品でね。今後もこの監督の作品は入念にチェックして行こうと思います。

悪霊のはらわた [DVD]

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まんま過ぎるこのパッケージもニクい!!