『ウェア 破滅』 ―内なる獣を解き放て―

              
                 

予告を観ての通り『ウェア 破滅』は狼男が大暴れする映画です。
血に飢え、ムーンライトエナジーを背中に浴びて無限にみなぎる破壊衝動。とにかく乱暴狼藉を尽くさなければ自分を表現できない狼男は、時代を越えて今なお愛される変わらぬ怪物であるのは言うまでもない。ところがここ数年、狼男たちは変わった。どーも映画男子たちと距離を置いて、ワイルドを捨て、マイルドを身にまとった狼男は女の子に受けが良さそうな恋愛映画にも出始めた。
何故だ!? そんなオシャレな狼男なんて僕らは観たくない!!
おおかみこどもの雨と雪』? そんなもんは知らん!! 牙を失った狼男は草でも喰ってろ!!

                   
                    

旅行でフランスに来ていた一家が襲われる事件が世間を震撼させた。夫は体中が食い千切られ、幼い息子は下半身が丸ごと行方不明(『ビヨンド』(81)でオデコが吹き飛んだ少女に匹敵するインパクト!!)、誰もが手加減を知らない獰猛な肉食動物が犯人だと信じていたが、事態は驚異的な進展を迎える。ただ一人、事件から生還した妻は「毛だらけの大きな体が…息子を食べた。の手はとても大きかった。」と証言。

その後まもなく事件現場の近くに住むタラン・グウィネックという男が緊急逮捕されたのだ。逮捕の決め手となったのは彼のルックスだった。背は高く、体中に生い茂る毛、まんま彼女の証言通りであった。
ところが、「いくらルックスが一致するからってこれは、あまりにも横暴すぎます!!」と警察に盾突く女弁護士ケイト・ムーアはタランの少年のようなつぶらな瞳を信じ、彼の無罪を証明するためあらゆる視点から事件を洗い直すにつれて浮かび上がる事実。タランの独特過ぎるルックスは、世界でも発症例が非情に少ない遺伝的な病気によるものであった。この病気の特徴はルックスの変化だけでなく、発症すると体の自由が奪われてしまうのだ。体の自由がきかない人間に人殺しができるはずがない。タランの体を検査してそれを証明することができたら彼の自由は約束される。それはケイトが導き出した切り札だった。すぐさま病院でタランの運命をかけた精密検査が開始されたのだが、さっきまで穏やかだったタランは検査中に暴れ出し、必殺の馬鹿力で医師たちを瞬殺して街へ逃亡。その姿はもはやタランではなかった。

文明にも現代科学にも囚われないその半裸姿から繰り出される手抜きの無いバイオレンスは感動的とも言えるけど……ただ残念なのは、変身前と変身後の姿が大して変わっていないんですよね。強そうなホームレスにしか見えないぞ。最近のバットマンやスーパーマンみたいにファンタジー色を薄めて意地でも現実的な要素を詰め込んだ結果、神秘的な狼男伝説が謎の病気扱いにされてしまうのは我慢ならん!!

                   


                

観よ!! これが真に美しいハンサムな狼男の変身だ!!(『ハウリング』(81))
かわいい女の子の前で自慢の変身を披露した結果、硫酸で逆襲。
でも、これはこれで嬉しいのかも。心なしか彼も喜んでいるように見えますからね。

ハウリング -HDリマスター版- [DVD]

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