『ダークスカイズ』―ドン底のドン底で絆と胸をつまめ―

感想文を書く前に一言いいたい。この映画は問答無用の超傑作である。
それは何故か?
ここ数日に渡って観てきた映画を思い出してみる……だいたい、あやしい映画である。僕があやしい映画に魅了される続ける理由は
ただ一つ、大スクリーンを通して現実や人知の垣根を越えた、恐ろしくも不思議な、好奇心をいちいち刺激するような体験ができるからだ。しかし期待をフルチャージして座席に着いても、僕の期待や渇望を100%完璧に満たし、潤してくれるような作品には、なかなか巡り会えない。
だか、会えた!! それがこの『ダークスカイズ』である。


↑ 予告だけを観ると「何だ…またオバケの映画かよ…。」と思うかもしれませんが、
  オバケは出てきません。代わりに、もっと異常なものが出てきます。

一見すると裕福に見える家族だが、夫のダニエルは無職でドケチ。妻のレイシーはそんなダメ夫に対し、静かな怒りをチャージさせ、長男のジェシーは険悪な家庭環境にウンザリして近所のバカ友の家でエロ映画を鑑賞し、やるせない日々を過ごし、次男のサムはこの映画で1番酷い目に遭います

ある晩、冷蔵庫の野菜だけが食い荒らされる事件が起きたと思えば、別の日には、大量の缶詰や食器が積まれて謎のオブジェがそそり立つ。近所の警察に通報するも「どーせ、犯人はあんたんちの息子だろ?」と勝手に息子を夢遊病扱い。
頼みの綱の警報装置も謎の誤作動を起こして手の打ちようが無い。夜だけに発生する怪奇現象は遂に真昼間にも堂々とより強力な猛威を振り回すようになる。100羽ぐらいの可愛い鳥軍団がミサイルとなってダニエルの家をロックオンしてはるばる突撃してきたのだ。これは恐ろしい!!
同時に次男のサムは近所のお友達の目の前で放心状態になり、失禁と金切り声を披露し始める。

怪奇現象まみれで、思春期直撃世代のデリケートな長男ジェシーは誰よりも先にぶっ壊れてしまう。
「僕の人生、どん底だ。これ以上悪くはならないはずだ…。」 
そう決意したジェシーは秘かに思いを寄せている赤毛でソバカスの似合う女の子シェリーのオッパイをつまむ
だが、この愚行が逆効果でシェリーとの仲が猛接近。乙女心とは怪奇現象以上に理解不能である。
かくして、真っ先に壊れたジェシーはあっと言う間に再生するのであった。


↑こちらが問題の怪奇現象以上に理解が困難なシーン。

やっぱり、理解できん…なんでオッパイつまんだら恋仲になるんだ?
個人的なお話なんですが、会社の同僚に物凄く可愛くて、優しくて、仕事もできる女の子がいるんですけどね。僕は仕事なんて覚えず、「明日はどんな冗談を言って笑わせようかな?」って妄想とイメージ・トレーニングを何十回と繰り返し、繰り返し行っているんですよ。
でも、いざ、その子を前にすると緊張して上手く言えなくてね…。それでも彼女は優しいから笑ってくれるんですよ…。
それなのに、このジェシーは何の努力もイメトレもしないで、いきなりオッパイつまんでその場から交際開始ってね、ちょっと虫が良すぎやしませんか?
それとも何か? お近づきになるには、まずはオッパイつまめってことなのか?

まぁ、それはそうと。
中盤辺りでダニエルが再就職を果たして、その晩、子供たちが爆睡していることを良いことに夫婦はお祝いセックスを開始するんですが、ここからが怖い!!
真夜中にレイシーが目覚めると隣に寝ていたはずの夫が、無意識で外へ飛び出し大量の鼻血を発射していたのだ。夫を落ち着かせ、緊急で夫婦会議を始めるんだけど、ダニエルが何故か鼻と口まわりについた鼻血を拭かず、鼻血まみれの真顔で会議に参加している姿が物凄く笑えます。
監督、これ狙ってやってんのかな(笑)
だが、異変を訴え出したのは夫だけではない。妻のレイシーは仕事中に突然、頭突きで窓ガラスを割始める。
今まで以上の速度で家族のぶっ壊し進む中、遂に夫婦は一連の怪奇現象の元凶を突き止めるが、事態は二人が想像していた以上に深刻であることが判明する
ダニエルは子供たちを守るため家の窓すべてに板を打ち付けて家を要塞にリフォームし、ショットガンで武装。レイシーは凶暴な犬を引き取って家の中に解き放ち、包丁を握りしめる。
度を超えた防衛策を披露する二人のその姿は、もはや夫婦ではなく家に立てこもった異常者であった。
近所から変人一家の称号を与えられた、どん底家族の絆が今、試される。
果たして家族を襲う怪奇現象の正体とは何なのか? それはさすがに言えないので、ぜひとも、近所の映画館でこの手加減の無い、
笑いと恐怖がパンパンに詰まった超傑作を観届けて下さい。