『ターボ』―世界最速のカタツムリ―

                             

我が国に送りこまれてくる米国産CGアニメの質は年々磨きが掛かり、その実写さながらの映像美に僕ら敗戦国民の心は根こそぎ奪われた。
数あるCGアニメ制作会社の中でとりわけ怪獣、宇宙人、ロボット、カンフー、原始人、デカい女の子…つまり男子が好きなものをバカ正直に作り続けているドリームワークス・アニメーションが去年作った『ターボ』が劇場未公開のDVDストレートという大惨事に!!なんてこった!!バッカじゃないの?
でも、日本で観れて良かった!!

どこの誰よりも速く走るレーサーになることを夢見るカタツムリのターボ。夢はデカいが勤め先では同業者たちからコケにされ続け、どこの誰よりも小さな存在だった。ターボの兄はそんな愚弟をかばい続け、ノロマでもいいから立派なカタツムリになってくれること願っていた。
ある夜、ターボは色々あって通常のカタツムリの100万倍以上の速度で走ることが出来る特異体質に大変身する。
ところがその力はあまりにも強大で、暴走した試運転は勤め先を営業停止に追い込んでしまう。
ターボは解雇。連帯責任で兄も解雇。
故郷を追われ人間の世界に放り込まれた無職の兄弟が行き着いたのは廃業秒読みの商店街だった。

そこでは客があんまりにも来ないので、暇を持て余した商店街の人たちはカタツムリを使ったレースに燃えていた。ここで登場するカタツムリが実に良い奴らでね。
商店街で模型屋を営むオヤジが所有するプラモのパーツからビルドしたカスタムパーツを体にドッキングさせたイタ車タツムリ!!
常識的に考えればそんなパーツは重り以外の何ものでもないが、男の子は機械的なパーツをつけた生物に目が無いので問題など無い。
これは違いの分かるドリームワークス・アニメーションだからこそ生み出せたキャラクター達なんですよ。ピクサーにこんなマネができますか?


タツムリたちだけで進行する物語のように見えるけど人間側にも物語があって、商店街でタコスを売るデブはターボと同じで狂った夢を追い求めるが、真面目な兄からは「いいからタコス売って来いよ!!」と怒鳴られる始末。
お互いに参加意識の低い兄も持つ者同士で通じるものがあったんでしょうね。
ターボとデブは兄の忠告を無視して全米が注目する自動車レースに参加することを誓い合う。ターボがレースで優勝して有名になれば客が戻ってくると信じた商店街の仲間たちは、夜逃げ覚悟で店の売上金をターボとデブに託す。
こうして負け犬たちと共にターボはレース会場に向けて発進!! レース中に妨害を受けて、割れたカラから火花を漏らしながらもゴールラインを目指して爆走するターボの姿に涙腺が緩むよ!!

↑こちらもドリームワークス・アニメーションが生み出した大傑作『クルードさんちのはじめての冒険』。
強制立ち退きにあった原始人一家が、住みなれない土地で暴力の限りを尽くすハートフルドラマ。CGの絵はキモいと言って好き嫌いしていると後悔するぞ!!
だけど、この映画もDVDスルーなんですよね…。

観よ!! この『ターボ』に引けを取らぬ弱肉強食レースを!!