『サファリ』−人類と野獣−

                             

見ての通り僕は動物が大好きなんです。美しい自然と動物たちを手間暇かけて撮影した『ネイチャー』という映画が公開していますが、まぁ、確かにそれも良いけど…どちらかと言えば、僕は血に飢えた動物たちが人間どもをモグモグゴックンする映画の方が好みなんですよ。そんな僕の欲望を早くもパーフェクトに満たしてくれそうな映画が!
その名も『サファリ』!! ところが、この映画、アメイジングスパイダーマン2』よりもつまらない映画だった…。
そんなわけで今回はネタバレ全開で書くよ。これを読めば傷つかないで済みます!! まぁ、ただの憂さ晴らしなんですが。


絶叫する美女をセンターにして、その背後で口をアーンした動物たちが力強く描かれているチラシ(左)を目にした時、「アニマル戦争が始まる…。」と誰もが確信したのは言うまでもない。

これはアフリカで野性動物を間近で見ることの出来るツアーに参加したアメリカ人観光客(いけにえ)が撮影した真実の記録映像である。
この手の記録映像作品では必ずと言っていいほどに、どーでもいい前置きがありますよね?
もちろん、この『サファリ』にもそれはある。カメラの前でイチャイチャと盛り上がる恋人たち。まぁ、どーせこの後、喰われるんだから楽しむがいいさ。


ツアー(人間狩り)が始まった途端、一気に期待が増す。
何故ならば観光客を乗せているトラックが隙間だらけで、外からは人間が丸見え!! こんなガードの弱い車で野獣がゴロゴロしているサバンナを突っ切るのはツアー的にどーかと思うけど、いつ誰が喰われてもおかしくない環境が整っているので、これはもう目が離せない!
しかも、ここで手前勝手なアメリカ人が草食動物では飽き足らず、「いいから、ライオン見せろ!!」とガイドに追加注文。
危険を承知でライオンのねぐらに突入すると期待通り車は故障し、物語の進行上、邪魔でしかないガイドは早々の毒蛇に噛まれ死んでしまう。この監督は分かってるよ!!
さぁ、いよいよ面白くなってきたぞ!! ところが…。


日が暮れ、ここから先は夜行性動物の瞳がビー玉のように輝き始める世界。
死臭を嗅ぎつけたハイエナ軍団が唸り声を上げながら車を包囲するも、ポイ捨てされたガイドの死体を骨も残さず平らげたら、そのまま解散。帰るなよ!!
車には隙間がたくさんあるんだから、他にやることあるでしょ!! いくら死肉をあさる動物と世間から言われているからって、言いなりになっちゃだめだよ!!
一応、ガイドが解体される様子を暗視カメラが映し出すも、寄り過ぎててどこを食べているのかイマイチ分からない…。
ちなみにハイエナのオスとメスの性器は非常に似ているので、昔の人はハイエナをふたなり動物だと信じ切っていた。
ではハイエナを擬人化したら、どんなキャラクターになるのだろうか…。





翌朝、「こんな隙間の多い車に乗ってられっか!!」と激怒したいけにえたちは、霊柩車を下りて自らの足で危険地帯の突破を試みる。
「何かがつけて来てる…。」と縁起でもないことを言い出すが一向に何も襲ってこない。
動物たちはカメラを前にして恥ずかしがっているのか?
みんなで生き延びようと誓ったものの、次第にエゴ剥き出しで罵り始め、ある者は崖から転落死、またある者は拾った猟銃が暴発して犬死…動物満タンな舞台を台無しにして、本作はアニマル大戦争とは程遠い『世界まる見え!テレビ特捜部』な事故記録作品に姿を変え始めた。
いいから、猛獣見せろよ!! この監督は全然分かってないよ!!




中盤あたりで濁った川を横断する場面が出てくるんですが、このシチュエーションは遥か昔からワニが出ると決まっている。横断中に1人のいけにえが「川の中に何かいる!!」と叫び、一行はパニックに陥るも川からは何も出てこない…。牙を剥いたヒルが一匹、懸命に喰らいついているだけ。観ているこっちがパニックに陥りそうだった。
ちなみにワニのチンコの形状は人類とよく似ている。普段は堅い皮の下に大事に収納されており、使用する時だけ、その雄々しい姿を露わにする。つまり僕らが死ぬほど努力してもマネすることは出来ない。その神秘性ゆえにワニのチンコを崇めている国が存在するのも納得できる。
ではワニを擬人化したら、どんなキャラクターになるのだろうか…。


物語もいよいよ終盤にさしかかった頃にマヌケな事件が起きる。
何を血迷ったか喉の渇きを潤すため、先程の川の水をガブ飲みした女の子が強烈な腹痛を訴え始めた。
いけにえたちは彼女を放っておけず危険地帯で野宿することを決意する。ところが、この女の子は夜中に勝手に抜け出して自発的に猛獣の夜食と化してしまう。何故、勝手に出歩いたのか明確な理由が描かれていないんですよ…。
腹痛に耐えきれず自殺を試みたのか? あるいはウンコしに茂みに向かったのか? 僕はウンコの方が有力だと思う。
多分、下痢だったんじゃないかな…。
さすがに人がいるところで下痢をブチ撒けるわけにはいかないし、これ以上迷惑を掛けるわけにもいかないので、彼女は最後の力を肛門に集束させ、お尻を噛まれるだけでは済まないと承知で夜のサバンナに飛び込んだのだ(と思う)。人間と動物との間には絶対的に違うのもがあると分かる天才的なこの演出。やっぱりこの監督は凄い人だよ!!
「お前、今、何時だと思ってんだ!!」と怒り狂った獣に彼女はモグモグゴックンされ、肉は胃の中で消化され、ウンコになって再び地上へと帰って来る。
何だか深いものを感じますね。

厳しく批判するはずが、何だが心を洗い流されたような清々しい気分になってきたな…。
やっぱり動物が出る映画は良い映画だよ。そして、一刻も早くハイエナとワニを擬人化する人が現れることを願う。

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