『ゴーン・ガール』

上映終了後にここまで胸糞悪くなったのは、何年振りだろう?
もちろんこれは、褒め言葉です。
「映画を観て感動しよう!」という動きがある中、時には「映画を観て傷つこう!」なんて動きがあってもいいじゃないか。身動きの取れない館内で、目をそらさず、凶器と化した映像に心をズタズタにされてトラウマを植え付けられ、作品をより深く理解するためにパンフレットを買って、家でまた傷つく。
こんなこと書くと「こいつは変態なのか!?」と誤解されるかもしれませんが、まぁ、これも1つの映画の楽しみ方なので。

事件はある朝、突然起きた。
居るはずの妻が姿を消した。部屋には砕けたガラスのテーブル。
夫はすぐさま警察に通報。ところが、自宅をくまなく調べてみると不自然な位置に飛び散った血痕、床には血が拭き取られた形跡。しかも、凄い量の血液が流れ出たと判明。単なる失踪ではなく、これは人殺しであると睨んだ警察は外部の人間ではなく、この夫に対象とした捜査を開始する。


すると、この夫は金遣いが荒く借金まみれ、10代の女の子(巨乳)と不倫、そして、妻には巨額の保険金をかけていた。
クズ夫に隠された驚愕の新事実が次々と浮上。それに追い打ちをかけるようにして妻が残した日記帳が発見される。
この日記帳には、出会った当初の愛と夢に満ち溢れた輝かしい日々(図書館で声が漏れないようにセックスしたり)や年月を重ねるに連れて枯れ始めた互いの関係(夫はセックスの時にしか妻を必要としなくなる)、夫のDVなどが生々しく綴られていた。さぁ、いよいよ夫が怪しくなってきた。



ここまで聞けば『火曜サスペンス劇場』のような内容だが、中盤からこの新事実をも越える新事実が浮上する。
夫婦の間に起きた事件も怖いけど、それ以上に怖いのは昼夜問わずに夫の周りで野良犬のように吠えまくる取材班や、面白半分で写真を撮ってアップするバカ。憶測を真実のように語るテレビ局の人間。
こいつらが作ったデマが日増しに大きくなって、遂には夫だけでなく彼の妹も巻き込まれ、いつしか世間は2人を親近相姦者だと勝手に認定してしまう。
あんまりだ…。


ネットや週刊誌に出ている根拠の無い噂や伝説を鵜呑みにして、僕もアイドルや俳優、監督に冷酷な眼差しを向けたことがあるから、この映画は観ていて胸をグサグサ突かれているようで本当にきつかった…。「お前だって、共犯者だ!!」と言われているような気がして…。
上映が終わり、周りは明るくなっても気分は暗く、思い出す度に嫌な気持ちになる。『ゴーン・ガール』は本当に凄い映画だ。