『ザ・ゲスト』

個人的にこの映画、大好きです。まず、物語が凄く薄っぺらい!!
薄っぺらいと言っても、けなしているわけではありません。必要最低限の情報のみで構成されていて無駄がゼロ。なので、観終えた後にこちらが脳内であれこれ追加補強して、勝手に物語に肉付けして楽しむのも一興な本作。最初にこの作品を手掛けた監督のアダム・ウィンガードと脚本担当のサイモン・バレットについても触れておきたい。

僕がこのコンビの名を初めて知ったのは『サプライズ』(11)というホラー映画でした。

この映画は動物のマスクを被った殺人鬼軍団が「今夜もひと仕事殺り上げっか!!」と裕福な一家が住む屋敷に惨殺目的でやって来るというお話。そんなホラー映画これまで何百回と繰り返されてきました。が、しかし、屋敷の中では殺人鬼以上におっかない人が待機していた。 という急ハンドルを切る傑作だった。そんなコンビの新作と聞けば嫌でも期待しちゃうわけですよ!!

で、この『ザ・ゲスト』。また誰かがやって来る気満々な不吉なタイトルですが、期待通り物凄い人がやって来ます。
本作はイラク戦争で長男を失った家族を中心に描かれる。息子を失い、心にポッカリと穴の空いた母親と仕事のことで常にイライラしている父親。
学校でイジメに苦しむ次男、無職のヤク中と交際中の長女、ピリピリしたムードが漂う一家のもとに、青い目の青年デイヴィッドがやって来るところから物語は始まる。

彼は戦死した長男の友人であり、彼との約束を果たす為にやって来たと言う。
普通だったら「そんなこと急に言われても、ねぇ…。」と困り果てるところだが、デイヴィッドは人を和やかにする魅力を秘めており、態度は紳士的だし、愚痴まで聞いてくれる。
ビルドアップされた肉体を披露して長女をムフフとさせたりもして、好感度はグングン上昇。
「デイヴィッドよ。行く当てが無いのなら、しばらく家に住むと良い。カンパーイ!!」 となった。

特に次男との交流は最高。デイヴィッドは手始めに次男をコケにして来た連中を殴り倒し、更にイジメを黙認してきた学校側を脅迫。まったく手加減が無い。
ここまでされたらホモじゃなくても惚れちゃいますよね。僕自身も学生時代にオタクであるという理由だけでイジメに遭っていたから、こういうシーンは胸に来るものがあるなぁ…。

ぶらりとやって来た心優しいアニキが、崩壊秒読みの家族を力技で立て直す心温まる前半。
元気になった家族を自らの手でブッ壊して、そのまま街に繰り出して暴れ狂う後半。
一体何がしたいのか訳が分からないけど、全編に渡ってかっこいいアニキが胸焼けするまで堪能できるので問題無い。

ちなみに本作のアイディアは監督がターミネーター』(84)と『ハロウィン』(78)を連続して観ていたら、ひらめいた。とのこと。
やっぱり、この監督は信用できる!!