イントゥ・ザ・ストーム

神出鬼没で無慈悲な存在である竜巻を描いたパニック映画は数あれど、この『イントゥ・ザ・ストーム』は一味も二味も違う。何故ならばこの竜巻には心があるからだ


真夜中に童貞卒業を目論むクソ高校生どもを瞬殺するメッセージ性抜群なオープニングから始まる本作。
クソ高校生襲撃は偶然ではなく必然であった。本編に登場する竜巻がハンティングするのは冷め切った関係をキープする親子、金儲けのことしか頭にない奴、大好きな女の子に告白する勇気が無いくせに見栄だけは張ろうとする童貞、YouTubeで人気者になればセックスできると信じるただのバカ…説明するのもバカバカしいくらいにバカな人間ばかり。

多分、この竜巻は空の上に住む神様が、地球上からこの腐ったバカ街を掃除するために遣わした人間掃除機なんだと思う。
本編でも気象学者が「こんな竜巻ありえない!?」って言っていましたし、専門家が言うんだからそうなんでしょう。
しかも、この竜巻は頭が凄く良くて群れで襲ったり、電柱を倒して逃げ道を塞いだりと頭脳プレーを駆使するだけでなく、ついにはガソリンと炎を同時に吸い込んで炎の渦をブチかます超必殺技までやってのける。そんな竜巻大怪獣に人類は成す術も無く、室内で頭を抱えてうずくまることしか出来なかった。


うるさい学校の先生とクラスのイジメっ子は、竜巻に吸い込まれてしまえ!!
そんな陰気な少年の願いが叶ってしまった様な卒業式襲撃シーンは一見の価値あり!!

だからといって、人類だって指をくわえて全滅なんてしませんよ!!
大竜巻を追跡し、撮影するためだけに生み出されたマシーン。その名も「タイタス」。
その姿はミニバンに分厚い装甲を張り付け、車体を地面に固定するための杭が四本も飛び出すカッコイイ車。その巨体で暴風雨などモノともせず突っ走る。

この映像を観て頂きたい。
不気味なサイレンが鳴り響き、心の準備も出来ない人類の前に突如として現れる竜巻大怪獣。乱れ飛ぶ車から逃げ惑う者、その近くでファイト一発を始める者。
その中で表情一つ変えずに駐車するタイタスの勇姿!!

しかし、タイタスには大きな問題があった。
それはメインパイロットである男が、人命救助よりも竜巻の撮影を優先する男であった。つまりマジンガーZに乗っているのに機械獣を見ているだけ。
そんな男がクライマックスで兜甲児に急成長し、金の為ではなく、人の命を守る為だけにパイルダーオンして必死で地面にへばり付く熱い展開へと突き進み、そして今ここに神が遣わした怪物と鋼鉄の怪物が大激突!! しかも、泣けるんだよ。

どんなに酷い目に遭わされても、「こんなところで死んでたまるか!! 負けるもんか!!」
そんな勇気を注入してくれる元気の出る映画でした。