『ミスターGO!』−ゴリラ最強−


日本で有名なゴリラを思い浮かべてみる…僕の脳ミソがはじき出した答えは『星獣戦隊ギンガマン』と『キテレツ大百科』のブタゴリラだった。このように日本でのゴリラ人気は今一つ。だけど世界に目を向けてみれば『キング・コング』を筆頭に数多くの大人気ゴリラが無数にいる。高い知性と僕らをパンチ一発で殴り殺すことが出来る力を兼ね備えた神秘性が長きに渡って人々の心を引きつけてきた。そんな中、「もしも、この馬鹿力でバットをフルスイングしたら…。」という小学生級のワン アイディアをいい年した大人たちが、膨大な手間暇と製作費を注ぎ込んで完成させたのがこの『ミスターGO』です!!


 中国でひっそりと営業するサーカス団。ここには世にも珍しい人語を理解するゴリラのリンリンとゴリラ語を理解する少女ウェイウェイ(声 田村ゆかり)がいた。
サーカスの運営よりも野球賭博に夢中な団長の影響で野球の知識とスキルを叩きこまれたリンリンとウェイウェイ。そんなクズ同然の団長の死後、幼くして倒産秒読みのサーカス団と団長が残した多額の借金を一挙に背負ってしまったウェイウェイのもとにある日、韓国プロ野球から入団オファーが舞い込む。後がないウェイウェイとリンリンは全額返済とサーカス団を守るため、「団長、金ができるまで帰って来るな!」と仲間からの声援を受けて、いざ韓国。
 純粋に金儲け目当てでやって来たウェイウェイとリンリンであったが、彼女らを待ち受けていたのはウェイウェイ以上に貪欲な大人たちが支配する業界だった。だ、騙された!!

普通の女の子なら業界の泥沼にハマって枕を涙で濡らすところですが、ウェイウェイは金銭問題に借金取り、子供とは思えない大人な経験で叩き上げられた女の子だった為、全く動じることなくリンリンに対して「お前も、もっと頑張れよ!!」と愛の鞭ならぬ調教用の鞭でシゴキを入れる。こうしてリンリンは野球だけでなく、動物虐待としか思えぬ営業の仕事までさせられる始末。リンリンの年齢は45歳。だが、人間の年齢でいえば定年越えの老人。


身も心もすり減らす日々をギリギリで突破していたそんなとき、日本から中日ドラゴンズ読売ジャイアンツが同時に「リンリンを我が球団に!」との申し出が。その一方で物言わぬゴリラの右ひざが遂に悲鳴を上げた。
 
 「ウェイウェイって本当にリンリンのこと愛しているの?」と疑問を抱く方がいるかもしれませんが、全てはサーカス団を守るためとった苦渋の選択だったと思うし、ウェイウェイもまたリンリンと同じで子供みたいな大人たちが勝手に作った理由で苦しんでいるだけなんです。

 で、この物語って僕の大好きな映画『猿人ジョー・ヤング 』(49)とソックリなんですよね。
この映画にもゴリラと心を通わせる少女(鞭なんて使いません。)がいて、都会から来たヤツが「君たちならアッと言う間に大スターだ!!」と盛るだけ盛っておいて都会で彼女たちを待ち受けていたのは、やっぱり金のことしか頭にない汚い大人たちが仕組んだ営業だった。だ、騙された!!というお話し。
この作品の終盤でゴリラが酒の力を借りて大暴れするシーンがあるんですが、リンリンも酒を飲んで豪快に暴れる。
つまり、この監督は絶対『猿人ジョー・ヤング 』観てるよ!!


話を『ミスターGO!』に戻すと、終盤、リンリンの快進撃を止めるにはゴリラと同等の力を持つ選手をぶつけるしかない…と相手チームはゴリラのZEROSを送り込んで対抗する愚直なほどにストレートな作戦で打って出た。しかもこのゴリラは野球業界に転職する前は、ウェイウェイのサーカス団でレイティンという名で働いていたのだが、リンリンと違って凶暴な性格ゆえにウェイウェイに見放され、檻暮らし余儀なくされた哀しい過去を持つゴリラだった。
 片足にハンデを負いながらもウェイウェイを喜ばせるために再びバッターボックスに立つリンリンと復讐心だけでここまで伸し上がってきたレイティン。
この二頭を『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』で例えるならリンリンはサンダ。サンダもリンリンと同じで片足ハンデのまま決戦に向かいましたからね。対するレイティンは勿論ガイラ。 そしてウェイウェイは戸川アケミ!!
知らない人にとっては訳分かんない例えかもしれませんが、この対決はあなたの心に『天才!志村どうぶつ園』のパン君よりも衝撃的かつ涙のホームランをブッ放すので、是非とも見届けて頂きたい。

猿人ジョー・ヤング -デジタルリマスター版- [DVD]

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『ミスターGO!』に多大な影響を与えた映画(と思う)『猿人ジョー・ヤング 』。
マイティ・ジョー [DVD]

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あんまりにも面白い映画だったのでリメイクされた。