『キカイダー REBOOT』−君の心にスイッチ・オン!!−

 まず始めに告白したいことがありまして…実は僕、本作の原点である『人造人間キカイダー』(72年)を観たことがないんです。
僕にとっての最初のキカイダーは2000年に制作されたアニメ『人造人間キカイダー THE ANIMATION』。
キカイダーことジローは無害なロボットだが、中身が剥き出しになったその姿を直視した子供は泣き出し、ホームレスは段ボールの寝床から逃げ出す始末。
ロボットならどんな中傷もノーダメージ!! と言いたいところですがキカイダーには「心」が組み込まれている為、外見をどーのこーの言われれば人並みに傷つくわけです。更にそこへ何故だか彼を狙う悪の組織が襲い掛かって来る。ほっといても壊れちゃいそうなのに。
そんな踏んだり蹴ったりな彼ですが、悪党との決戦を前に童貞を紛失。全く予想していなかった事態に。
当時、思春期の真っ只中の僕は「ロボットと人間がセックス!?」と心に得体の知れない迷いが浮かび上がった。こんな陰気極まりない物語をちゃんと映像化できるのか? キカイダーはセックスするのか? しないだろうな。
歪んだ期待と不安を胸に僕は映画館に向かった。


 女子大生のミツコは人間の男の子には全く興味が無く、暇さえあれば漫画を読み漁り二次元男子に恋焦がれて生きていた。そんなある日、お友達のガールズトーク(人間の男の話題)を振り切って帰宅すると、不法侵入してきた謎の軍団に襲われ、弟のマサル(こいつもオタク)と共に絶体絶命の危機に瀕したその時、ギターを背負ったロボット青年ジローが現れ大暴れ。当然、人間ごときがキカイダーに変身したジローに勝てるわけもなく、あっと言う間に撤退。と思ったら上空から巨大ロボを投入して燃えるような延長戦に突入し、一夜明けたら今度はフジテレビの『逃走中』みたいなスーツ姿の連中が襲ってきて…このように前半はペース配分を無視したバトル、バトル、バトルの大連打。
突如として現れたジローはミツコとマサルの父である光明寺博士が死ぬ前に作り上げたロボットであり、どんなことがあっても二人を守るように設定されている上にドリフのコントまで自在に操る。
単純に考えても安堂ロイドの1億倍頼りになるハイスペック・ロボット


 ひとしきり暴れた後は今度はみんなで走って逃走劇。逃走と言えば乗り物。キカイダーの乗り物と言えばサイドカー!! ミツコとマサルをサイドに乗っけて走り出すのかと思ったら、移動手段は市バスと徒歩。まったく緊張感の無い逃走劇が幕を開ける。予算的に厳しかったのかもしれませんが、この選択が『ターミネーター2』を彷彿とさせるハートフルな疑似家族ドラマになってくるわけです。ミツコもね、当初は頼んでもいないのに勝手に彼氏面して護衛するジローにウンザリしていたが、誰にでも優しく接するジローを見ているうちに本当は誰よりも寂しがり屋で意地っ張りな彼女の心がちょっとずつ変わり始める。「私のこと守ってくれるの? でも、プログラムされたことなんだよね。(小声)」とついつい別の理由を期待してしまうガーリーな一面も。
いよいよミツコが異性に興味を持ち始めた!! と言っても相手はやっぱり人間の男の子じゃないんですが(笑)


 そんな芽生え始めた愛をズタズタに引き裂くように現れた強敵マリ。ジローに対して妙に馴れ馴れしい態度を見せつけてくるマリ。ミツコにとって油断ならぬ女ロボット。ここでミツコがマリに嫉妬するラブコメ的展開を期待したのが甘かった。マリはこれまでの敵とは桁違いの戦闘力とズル賢さでジローをボコボコに可愛がり、瞬く間に機能停止に追い込んでしまう。ただ残念なのは、ここでも予算の都合なのかマリは最後までビジンダーに変身しないんですよね…。
だけどマリを演じた高橋メアリージュンのエキゾチックなソフトボディから繰り出されるハードなアクションを観たら「あの娘の蹴りは一度味わってみたい!!」と何かが芽生えること間違いなし!!
あと、マリは『ターミネーター3』のT−Xのチャームポイントである片腕光線銃まで勝手に受け継いでおり、余すところなく僕らの破壊衝動を満たしてくれる素晴らしい小娘なのだ。


 そして後半、漆黒のボディに脳ミソをパイルダーオンした最狂のロボット ハカイダーが登場。
「今の政治家も、この日本も、全部ダメだ!! 俺が全て破壊してやる!!破壊だぁぁぁぁぁぁ!!」と寝起きの破壊者のとどまることのない怒りは組織にも飛び火して大暴走。
こんな不衛生な奴が町で暴れていたら確かに怖いけど…この生臭さが、かっこいいんだよなぁ〜。

↑ こちらは僕の思春期ハートに消えないシミを残した『人造人間キカイダー THE ANIMATION』。
スーパー豪華な声優陣の共演も見所な本作。漆黒のボディ。丸出しの脳ミソ。そして小杉十郎太! アニメ版のハカイダーも生臭い!!
ちなみに REBOOT版でもキカイダーハカイダーに心を操られ、ミツコを襲ってしまうスリリングなシーンがある。

 ハカイダーとの死闘の中でキカイダーは命令としてではなく心のままにミツコやマサル、そして、数多くの人の心を守るためだけに戦う勇姿は近年の国産ヒーローたちが忘れていた大切なものだ。国内の評価は良くないようですが、ヒーロー映画が面白くなるのは2作目からですよ。
ノーラン版バットマンだって最初はイマイチな評価でしたが、2作目から世界的大ヒット作に伸し上がったわけですから。本当に試されるのはここからです!!
アメイジングスパイダーマンは2作目でもイマイチでしたが!!