『スノーピアサー』―皮肉だらけの駆ける楽園―

                                   
                    
                    
2014年、年々加速する地球温暖化問題を解決するため世界中の科学者たちが英知を結集させて導き出した答えは「地球を丸ごと冷やす。」というがん首を揃えてバカとしか思えない凄まじい結論であった。こうして編み出された必殺の地球冷却物質「CW−7」は青空に向かって撒き散らされた。人類の希望「CW−7」は風に乗って地球の隅々にまで行き渡り、期待を上回る効果を発揮し地球は、雪と氷に閉ざされた氷河期に逆戻り。ガッカリした人類は再び英知を結集させて、1年をかけて地球を1周する巨大な列車型移住空間「スノーピアサー」を作り上げ、生き残った人類を乗車させて発進!!

見ての通り僕はウソで塗り固められた映画が、本当に本当に本当に大好きなんですよ! その中でもこの『スノーピアサー』はここ数年撮られたSF映画の中でも群を抜いてウソつきだ。もちろんこれは褒め言葉なんですが(笑)
目の肥えた人たちは、こういう映画を観るなり「そんなの絶対にありえない!」とか言って夢を壊すようなこと言うんだろうけど、僕は「そんなの絶対にありえない映画たち」を世界で一番愛している男になるまで努力していく所存ですからね。負けませんよ!!

まぁ、それはそうとね。氷河期を迎えて17年。巨大なフラッペと化した地球の上をガリガリ突き進む車内には、医療に食糧、エステにサウナ、水族館に学校、寿司屋まで設けられていますが。実際、それらは金持ちと権力者だけに与えられ、金の無い無賃乗客たちは列車の1番後ろの車両に寿司詰めにされていた。そこには娯楽も風呂も窓も何にも無い! 17年も風呂に入っていないので、みんな真っ黒。おまけに配給される食事はとんでもないものを原料とした不気味な寒天のみ。逆らう者は罰として腕をもがれてさらし者。無賃乗客たちは人間とも思われていない。いくら列車のお尻の部分に住んでいるからとは言え、俺たちはウンコじゃない!! 人間だ!!

ここまで読むとね。宇宙で暮らす金持ちと地球に取り残された貧乏人が激突する映画『エリジウム』(13)を連想する方がいらっしゃると思いますが、『エリジウム』の場合、クライマックスで金持ちどものねぐらに突入する貧乏人はたったの数名でしたが『スノーピアサー』の場合は、その5倍以上の貧乏人が殴り込みます。武器を手にして闘う者、傷ついて倒れる者、何もしない者、色々出てきますからね。物量的に見ても『エリジウム』より凄いことになっているのは言うまでもありません。

無賃乗客のカーティス(演じたのはキャプテン・アメリカことクリス・エヴァンス!!)は不当な現状を打破するため、自由と平等を勝ち取るため、ドラム缶を繋ぎ合わせて一本の柱を作って仲間と共に突撃するんですが、この映画を撮ったポン監督が言うにはこの柱は男根を意識して生まれたアイディアとのこと。

↑違いのわかる男が生み出したセクシャルな柱にキャプテン・アメリカがまたがってダイナミックに挿入されるという奇跡のビジョンを観よ!!

金持ちどものいる先頭車両に辿り着くまでには電子ロックで守られたドアを開けなければならない。
体力と殺意はあるが偏差値は低い一行は、仕方なく薬中の技術者ナムグン・ミンスソン・ガンホ)と重度の薬物依存を誇る彼の娘ヨナを仲間に加えて再発進するも、ドアを開けたらそこには斧を握りしめた殺人集団がひしめく『300』(07)な満員車両だった。金属の巨大チンコの次は束になって襲い掛かる殺人集団…。
いやぁ〜ポン監督は一体どこまで本気なんでしょうか?
こんなこと考えつく人はロクな大人じゃありません!!
もちろんこれも褒め言葉ですのでね。
そしてクライマックスで明らかになる先頭車両の秘密と驚愕の真実。中盤までは暴動映画だったのに突然、「人間とは?」「人類とは?」を問い詰めるような、簡単には割り切れない凄い話になるんですが…まぁ、気になる方は映画館で確認して下さい
人の幸せは他の誰かの不幸によって成り立つと言いますか…いやぁ〜本当にね…まぁ、ネタバレになるので言えませんが。
あと、どーでもいい情報かもしれませんが、石原良純さんもこの映画を鑑賞したようです。……本当にどーでもいい情報でしたね。


                     
↑聴いているだけで思わず電車内を全速力で駆け抜けたくなるようなカッコイイBGM。