『ペーパーハウス 霊少女』―心に沁みる思春期を今一度―

                                     

日本では未公開でありながらも、その高い完成度で多くの映画好きを魅了した映画『ペーパーハウス 霊少女』がこの度DVDになりました。
僕は今回DVDになるまで名前も知らない映画でしたけど、商品紹介の文章に「思春期」「孤独な少女」「ホラーファンタジー」と映画男子の期待を絶対に裏切らない三種の神器が記載されていたので、迷わず購入して鑑賞しました。

この不思議な物語は学校ではクラスメートのブスに喧嘩を売り、家ではお母ちゃんに悪態の限りを尽くす思春期真っ最中の少女アンナが授業中にとった些細な暇つぶしから始まった。
彼女は絵心が一切こもっていない家をノートに描く。あっさり先生に見つかり、罰として廊下に立たされるも反省の態度も示さず堂々と廊下に立つアンナ。突然のめまいが彼女の意識を奪い去り、その場にバターっと倒れ込んでしまう。突然の事態に教師は驚き、クラスメートのブスは歓喜に酔いしれた。
彼女の意識はどこまでも続く野っ原に飛ばされ、そして彼女の前に現れた一軒の白いブサイクな家。そのまごうことなき無様な建築物こそ、アンナが授業中に描いた家だったのだ。

その後もこの謎の失神は続き、その度にアンナの意識は野っ原と白い家に飛んでいった。しかし、このままでは地味だと思ったのか、あるいは女の子の意地に火がついたのか。急遽、家の窓の部分に自分の画力を集束させて男の子を描き足す。人前では「男子は嫌い!!」と豪語しつつも、「まずは男子を…」と思いつくところが可愛いですね。しかも、ちゃんとオシャレな服にチェンジして会いに行く演出がニクい!!
ところが男の子の下半身をちゃんと描かなかったため、彼女の前に現れたのは下半身が動かない寝たきり少年だった。アンナは下半身を描かなかったことに深い責任を感じ、室内でも楽しめるように浅知恵絞って家の中にたくさんの本やオモチャを描き続け、少年のために物資を大量投下する。この贈り物の中にエロ本が含まれていないところがピュアですよね。
出会った当初は上手くいかなかった二人は思春期パワーを駆使して次第に距離を縮め、気づけば学校にも家にも居場所の無い孤独なアンナは、傷つくことばかりの現実世界よりも愛しの彼がいる二次元の世界にうつつを抜かすようになる。

ある日、アンナは彼を喜ばせようと自慢のお父ちゃんを描き足す。だが、現実のアンナのお父ちゃんは仕事で家にはいない上、会っても酒臭い。そんな父に対する憎悪が大爆発。アンナは自ら築き上げた世界を鉛筆一本で塗りつぶし、クシャクシャに丸め潰してポイ捨てする手抜きのない八つ当たりが、とんでもない事態を招き入れてしまうのでした。




ペーパーハウス/霊少女 [DVD]

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