『V/H/S シンドローム 』―下品が束になってやってくる―

今年も残りわずかですが、まだまだやることは山ほどある。勤め先に邪魔されて観に行けなかった映画たちが、次々とDVDとBDになって実家に襲い掛かる。
そのうちの1本がコレ。嘘か本当か、海を越えてやって来た失神者続出の問題作。遂に観たぞ『V/H/S シンドローム』!!
ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(99)のヒット後、取りあえず手持ちカメラをブルブル震わせりゃ、怖さと不快感は倍増。しかも安く撮れる。
その利点に気付いた浅はかな奴らによって骨の髄までしゃぶられ、結果的に大人気になってしまったこの手の激安映画。
だが『V/H/S シンドローム 』はそんな激安たちとは志が全く違う激安映画なのだ! 確かに安いです!!

ある時は群れをなして罪の無い女の子を襲い、またある時はバットをフルスイングして近所を破壊する。そんな人間の風上にも置けないクズの寄せ集めたちが、ある日「とある家のビデオテープを盗んで来い。」という謎のミッションを依頼される。高額な報酬に目がくらんだ彼らは何一つ疑うことなく言われたことを鵜呑みにして元気よく不法侵入すると、そこには臭そうなジジイの死体と大量のビデオテープという『ソウ』(04)に匹敵するミステリアスな空間を目の当たりにするが、クズたちは「だからなんだ!? 死体がなんだ!? 臭いけどビデオテープを探せ!! 」と金のためならなんのその、クズたちは死体を前にしても体をはって汚れ仕事に打ち込みだす。こんなガッツがあるなら真面目に働けよ。

男たちは内容も分からぬ問題のビデオテープにぶち当たるまで、散らばる大量のビデオテープをひたすらデッキに突っ込んで記録映像を観続けることになる。
そこには異常な暴力、超常現象、オバケ、タマキン、そして、おっぱいが縦横無尽に飛び交う、僕らの常識がまるで通用しない映像が収められていた。
どんなに努力しても、両親には理解されないであろうドギツイ濁った映像がテレビ画面から絶え間なく流れ出す。ここまで壮絶な内容が連射されると、もはや映画というよりも我慢大会と言っても過言ではない。
この映画は、テーマは異なるがどれも強烈なまでに下品な6本からなるオムニバス形式で綴られるデラックスな1本です。
個人的に気に入った第1話の『Amateur Night』と第3話『Tuesday The 17th』


『Amateur Night』は自家製のポルノを撮ろうとする、これまたクズ2人とそんな2人に抗えず、渋々と行動を供にするダメな童貞のほろ苦い青春の大賛歌。3人は撮影の協力してくれそうな女の子を調達するために夜の町に繰り出す。そして酒と薬の力でフニャフニャになった女の子たちを部屋に連れ込み、狂気を帯びた撮影が始まった。勝手に出演者にされてしまった大きくて円らな瞳を持つ黒髪の女の子の貞操にクズ2人のタマキンが迫る!! その横で童貞は罪悪感に潰さてパニック寸前。
ところが、撮影の最中に彼女が突然暴れ出し、力任せにクズの体をあっと言う間にひき肉に。タマキンも千切れ飛ぶ大惨事を君は直視できるか?(残念ながら日本版ではモザイクの塊として処理されている。おのれ!! モザイクめ!!)
生き残った童貞の足元に黒髪の彼女は帰宅したての主人にすり寄る子猫のように近づくも、当然拒絶される。すると彼女は「私のこと嫌いなの…?」と全裸でメソメソしだす姿に僕は岡本倫先生の『エルフェンリート』的な萌えを見た!!
例え人殺しとは言え相手は女の子。気まずくなってきた童貞は「ごめんね。そんなつもりじゃ…」と今さっきバカ友のタマキンが宙を舞う生臭い光景を見たばかりだというのに、優しく接し始める。その結果、彼は童貞以上のものを彼女に捧げるはめに…。
この物語は童貞が恋した女の子の正体は、血に飢えたバケモノでしたというスーパーハードな『交響詩篇エウレカセブンなのでした。





『Tuesday The 17th』は森の中で出来損ないのプレデターが暴れているだけの微妙な出来栄えで、正直大して面白くない。ところが逃げ惑ういけにえたちの中にジェイソン・ヤチャニンの姿が!!
多くの人が「誰そいつ?」と率直な疑問が浮かぶと思いますが、ド変態ミュージカル映画『チキン・オブ・ザ・デッド 悪魔の毒々バリューセット』(08)の主人公を演じた方です。
今回も懲りずにご両親が観たら「今すぐ実家に帰って来い!!」とカンカンになって嘆くような不謹慎な役を演じています。安心しました。



                              


                                                特報

            これは悪い冗談か、あるいは事故か。『V/H/S』の続編がいよいよ来年日本に上陸します。早く来い来い2014年!!!