『ムード・インディゴ うたかたの日々』―うたかたのとわ―

        


↑この予告を映画館で初めて目にした時、物凄い夢のある映画かと思ったんだけどなぁ…。

アメリ』(01)で世界中の映画男子のハートをカツアゲした僕らの永遠の恋人オドレイ・トトゥが大スクリーンに帰ってきた!!
鼻息を荒くして全速力で映画館へ向かったのだが……
どうして、お金を払ってこんな哀しい思いをしなければいけないのか? パンフレットも高かったし…。

眼を閉じて自分の過去を振り返ってみる。高い電車賃と長い時間、そして貴重な生活費を犠牲にして辿り着いた映画館で観た映画がマヌケな内容で、無理を言って同行させた友人をカンカンにさせてしまい、気まずい空気が充満する帰り道。当然一言も口を聞いてくれなかった。
今回紹介する映画『ムード・インディゴ うたかたの日々』から滲み出る哀しみは、そんなマヌケな哀しみとはまるで違う。


ここはパリ。無職だが将来に何一つ不安を感じない金持ちのコランは黒い親友ニコラと白い親友シック、ブサイクなネズミとで僕らの常識が全く通じないホモ臭い日々を送っていた。
僕らはいつまでも仲良しだ! でも僕だけ彼女がいないのは我慢ならん!!」と声を荒げて勝手に怒りをまき散らすコラン。金とリッチな生活を手にし、優しい友達たちに囲まれる完璧なアランが経験したことが無いもの、それは恋と愛とそしてセックスだった。


ある日、コランは出会いを求めて参加したパーティーで計り知れぬ魅力を全身にフルチャージした美女クロエ(僕らの永遠の恋人オドレイ・トトゥ)に出会い、恋に落ちる。相手がオドレイなんだから仕方がない。
常に根拠の無い自信で満たされていたアランであったがクロエの前では上手く気持ちも伝えられず、失敗の連続。恋って難しいな。なんかこう…他人事とは思えない男の不器用な生き様に感銘すら感じてしまう。




二人は初めてのデートで雲に乗って街の上空を散歩するという非常識で夢のある最高の舞台を選び、静まり返った森のベンチで想いのたけを込めたキスを交わす。
ああ、人を愛するってなんて愚行で、恥知らずで、そして素晴らしいんだろ。









* 警告!! ↓ここから先は結末に触れています。

ここで物語が終わってくれればもっと最高だったのに、ここから紡ぎ出される二人の物語はいままで築き上げた幸せが全部パーになって破滅していく様を一方的に見せつけられる展開になっていく…。
ある日、クロエの肺に睡蓮が咲いた。いまいち悲壮感が感じられないこの不思議な病に倒れたクロエを救う為、高額な治療費を投下するコラン。残高の底が見え始め、働くことを余儀なくされたコランであったが仕事は全く上手くいかず、ブレーキの壊れた不幸は大きな渦となって親友たちをも飲み込み、明るかった二人の部屋は今では腐敗の臭いと狂気が立ち込めるゴミ屋敷同然。
不幸が絶頂を迎えると画面がざらついた白黒になるという、ありがたくない映像革命が視聴者のハートを容赦無くより一層えぐる。携帯小説なんて甘い甘い!!
残されたのはゴミに埋もれた最愛の人とボロボロになった無職のうたかたの恋と愛と…。