『キャリー』―クロエに愛をこめて―

来たる11月8日(金)。仕事が定時を迎え、僕は全速力で映画館へ向かった。彼女に会うために
 

 

1976年に奇才ブライアン・デ・パルマが映画館に解き放った『キャリー』が長い年月を経て再び映画館へ帰ってきました。
所々に散りばめられた濃厚な76年版に対するリスペクト。ところがリスペクトだらけで結果的に76年版のコピーに限りなく近いリメイクとなってしまい、76年版を100回くらい観ている方ならば字幕など目で追わなくとも、映像のみで理解できるほどである。その結果、海外では「76年版の焼きまわし」という不名誉な称号で与えられてしまいました。だが、どんなに上から目線の評論家が本作を叩こうが、僕ら決して動じない。そもそもあの狂気を帯びた76年版がそう簡単に超えられるわけがないし、僕だって今回のリメイクには初めから大して期待などしていなかったが一味も二味も違う作品に仕上がっていた。
なぜならば今回の2013年版のキャリーを演じたのが、映画男子のハートを的確に射抜いてきたクロエ・グレース・萌レッツだったからだ。


76年版とだいだい一緒な2013年版ですが、個人的に「うわっ!! 違う!!」と感じた点が3つあった。
1つ目は2013年版で初披露となるキャリーの誕生秘話

2つ目はキャリーが学校のシャワー室で生理を迎えてしまい、クラスのバカどもに侮辱され生理用品が乱れ飛ぶ有名な場面。
76年版だと女の子たちが一糸まとわぬ無防備な姿をさらけ出し、シャワー室は桃色の熱気が立ち込める男子に優しい空間と化していましたが、ところがどっこい、2013年版では誰ひとりとして脱いでいない、男子に優しくない殺菌された空間で、女の子たちは男性娯楽的な部分をバスタオルでガードしておっぱいの1つも出していなかった。年齢的にさらけ出せないという切実な理由は分かるものの、映画男子が最も期待していた部分なだけにその哀しみは計り知れない。その上、セックス中の男までも尻をタオルでガードする始末。不自然だし男らしくない!! 
出せ!!尻を!!
確かに本作で圧倒的に欠けているのは裸であるが、クロエはオドオドしながらスク水一丁で登場するので世の中、悪いことばかりじゃないですよ。
裸を取るか、スク水を取るか…これは戦争を語るのと同じくらい物凄くデリケートな問題と言っても過言ではない。
あと、キャリーを侮辱したバカどもの女リーダー・クリスの2013年版は76年版をも越えるアップグレードされた陰湿さで、スマホを凶器に泣き叫ぶキャリーを撮影してネットにまき散らす手の施しようの無いクズ。僕は2013年版のクリスが本当に嫌いでね。態度も凄くふてぶてしいし、顔つきが凄く意地悪そうと言うか、なんかこう…野球賭博やってそうな顔つきでね。

3つ目は『キャリー』最大の見せ場であるプロムの大虐殺。
76年版ではキャリーを演じたシシー・スペイセクが、バケツいっぱいに入ったブタの血を浴びた瞬間、瞳が今にもこぼれ落ちそうなくらいに開いた目蓋と瞬きすらしない瞳。演技を越えたこの世のものとは思えぬ物凄い表情を披露する。真に志の高い女優だからこそ到達できた領域であった。
そして2013年版はと言うと……。
だけど、その前にプロムに出席する時の彼女の晴れ姿に着目して頂きたい。
桃色のドレスと綺麗な谷間。ヒットガールのまな板おっぱいがここまで成長したかと思うと感無量ですよ
そして76年版と同様に舞台に上げられ、喜びの絶頂にから絶望のどん底に蹴落とされて念力が大爆発する。激怒しているはずなのにクロエは本編屈指の笑みを浮かべている。やっぱり人間は極限まで追いつめられると笑うしかないのだ。
今まで自分をコケにして来た生徒、自分の名前すら憶えてくれなかった教員、全く無関係の他校の生徒が一瞬にしてドミノ倒しとなる光景は圧巻。
おそらく積まれた製作費のほとんどがここで一気に使われているのだろう。さらに今回のキャリーの念力の演出は76年版とはまったく違い、両腕を前に突き出して「えいっ!!」とエスパー魔美ライクなご機嫌な発射ポーズが追加され、念力で千切れたケーブルをバイオ怪獣ビオランテの触手のように自在に操り、恐怖に怯えきった生徒を容赦なくサディスティックに引っ叩き、遂には空まで飛びだす。特筆すべきこととして76年版では瞬殺された人物が今回は生かされるなど異なる点がある。
ここだけは頑張りました!! と思いつく限りの暴力を一点集中させたものの、生々しさは薄れどちらかと言えばファンタジーな仕上がりとなってしまい、結論を言えばいかに76年版『キャリー』が偉業だったかを再確認させられ、「無意味なリメイク」と言われようとも、スク水のクロエ、桃色ドレスのクロエ、念力を自在に操るクロエ、まぁ、クロエなら何でも良いんだけどね。そこには間違い無く意味はあった。だが、他には何も無かった。

Carrie (Original Motion Picture Soundtrack)

Carrie (Original Motion Picture Soundtrack)