『天使の処刑人 バイオレット&デイジー』―この瞬間もあなたと共に―

                 

今回紹介する映画は『天使の処刑人 バイオレット&デイジー』です。
感想文を書く前にどーーしても言いたいんですが、日本版の予告を観ると街を汚す悪党どもを掃除するキュートな処刑人たちが奏でる血で血を洗う、「私たちに明日はない片道人生爆走映画」のように観えますが……。
海外版の予告を観て下さい!!この物語はそんなハードな方向とは真逆なソフトかつ幻想的な百合映画なんです。分かりやすく言えばこの映画は高橋しん先生の脳内を映像化したような作品です。エロとバイオレンスが程良くブレンドされた可愛い女の子たちが、ひたすらモフモフするだけ。なので「女の子がバンバン悪党を景気よく殺す!!」永井豪先生みたいな映画を期待している方には全く向きません。

ここは格付けされた殺し屋たちがゴロゴロしている不思議な街。
下っ端ランクに君臨するナンバー8の称号を持つ殺し屋バイオレット、そしてバイオレットに友情を越えた感情を抱いている相棒のナンバー9のデイジー。ビー玉みたいな澄んだ青い瞳をコロコロさせた二人は人殺しで稼いだ小遣いで、その日その日をギリギリで食い繋いでいた。殺し屋も楽ではないのだ。            
                 
その日、二人の若き殺し屋の残高は消えかけていた。
生活の危機に瀕した二人をよそに世間では今どき女子のハートをくすぐる新作ドレスが巷を騒がせていた。
オシャレに飢えた二人がこの上品な獲物に放っておくはずはない。ドレス欲しさに「さぁ、ドンドン殺って、ドンドン稼いじゃうからね!!」と火中の銭を拾う決意する。同業者から二人に用意された殺しの依頼は「殺して欲しいから殺してくれ。」と自発的に電話をかけて来た謎の男の抹殺であった。バカバカしいくらいに地雷であったが、二人はもっとバカだったので依頼をすんなり引き受けてしまう。


謎の男が滞在するアパートに侵入するもターゲットが留守だったため、あろうことかバイオレットは「そいつが来たら起こしてね。」とデイジーにお願いして敵地でグーグー眠り始める。そんな無防備なバイオレットを前にしたデイジーはバイオレットにくっついてグーグー眠り始める始末。
そこへ何も知らないターゲットが帰宅。見知らぬ小娘二人が爆睡中と言うサプライズに動じることなく、風邪を引かないように二人に毛布をかけた後、男も一人、ソファでグーグー眠り始めてしまう。

目を覚まして正式にご対面する3人。男は「君たち殺し屋だよね? どうぞ。」とサッサと命を差し出すも、バイオレットはプロでもないくせに「おかしいぞ…これは何か裏がある。」と勝手な深読みをする一方で、人懐っこいデイジーはミステリアスな男の人生に興味津々。男はなかなか殺してくれないので、自慢の手作りクッキーを焼き始める。
若き殺し屋たちはおいしいクッキーはモグモグ食べながら(後からミルクも追加オーダー)「おっさんも苦労してんだね。」と謎の絆が芽生え始めていた。その頃、男の命を狙う別の組織や殺し屋業界の生きる伝説・ナンバー1が3人のいるアパートに集結しようとしていた…。

目を閉じて過去を振り返ってみる。数多くの女の子の殺し屋映画を観てきましたが、今回の『バイオレット&デイジー』は、いままでのどのタイプにも属さない、他の追随を許さない異彩を放っている。
個人的に二人がクッキーを食べるシーンは物凄く可愛いです。
「毒が入ってんじゃない?」と疑いつつも、最後は食欲に負けてモグモグするバイオレットの横でクッキーをノーガードでむさぼり食うデイジー
口の周りにミルクの跡をつけて幸せに酔いしれて、ふにゃふにゃになるデイジー。見ての通り僕は口の周りにミルクの跡をつけた女の子に弱いんですよ

二人は身も心も一心同体の運命共同体でありながらも、実はお互いに秘め事を持っていたりする。
例えばバイオレットはデイジーと組む前はローズと言う相棒がいて、何か色々あって死んじゃったという謎の過去を持っており、そんなバイオレットの心の傷を埋めようとする優しいデイジーもまた、陰で秘かにバイオレットを裏切っていたという驚くべき事実が次第に明らかになっていく。



本編を飾り立てる歌声がいちいち心地いいのもポイント。