『死霊館』―愛でいっぱい―

                    
                    

長靴を履いた目元の暗い少女が家族の絆を引き裂く『ポゼッション』、悪魔も映画好きだったという揺るぎない事実を打ち立てた『フッテージ』、
声優・水樹奈々さんのド根性吹き替えが話題になったリメイク版『死霊のはらわた』。
見ての通り今年は悪魔映画の大収穫である。
そして、今回の『死霊館』は恐怖、娯楽、絆、バイオレンス、感動、そして素足…あらゆる要素がスクリーンの端までゴロゴロしている、おでんのような凄い映画だった。
しかも、しっかりと煮込んで味が染み渡っていた。そこに実話という必殺の隠し味が好奇心という名の強烈な引力を発生させて観客をドンドン引き込む。怖いはずなのに目が離せないこの映画は官能的とも言える大傑作。
しかし、21世紀にもなってこの80年代ライクな邦題は何とかならなかったのか…。

              
この映画は夫婦で長年オバケ退治を行ってきたエドとロレインが、1971年に体験した凶悪過ぎてお蔵入りされた事件を映像化した真実の記録です。

開始早々、エドとロレインが1968年に解決した謎の人形が若い看護師たちを恐怖のドン底に叩き落とした「アナベル事件」の紹介から始まり、掴みとしては最高のオープニング。

1971年。5人の可愛い娘たちをもつペロン夫妻はロードアイランド州ハリスヴィルにひっそりとたたずむ古い館を購入する。
新生活に小躍りする家族。だが、既に異変は起きていた家族の愛犬が拒絶反応を示し、意地でもこの館に入ろうとしなかったのだ。
ペロン夫婦はそんな愛犬のSOSサインをシカトして「今夜も子作りに励むぞー!!」と
ノーガードな初夜に酔いしれていた。この後、酷い目に遭うのだから盛大に楽しむがいいさ。

翌朝、家族は室内の異常なまでの寒さと臭さで目が覚める。寒くて臭い最悪の目覚めで恐怖の巡礼は幕を開ける。
目覚めた妻のキャサリンは体についた覚えの無いあざに困惑していた。「昨夜、夫は私の体に何を?」と夫が危ない性癖に目覚めたのでは?
と危険視したが日に日にあざの数は増えていき、その夫に対する疑惑は消えたものの娘たちは夜中に突然足を引っ張られ、別の娘は眠りながら洋服ダンスに頭突きを始め、その奇行を止めに入ろうとするとタンスの上で待ち構えていたウンコよりも醜い顔をしたババアのオバケがジャンピング・アタックで奇襲!! 
家族は「寝相が悪い!」を通り越した怪現象とタチの悪い心霊現象に悩まされ、眠れぬ夜を過ごしていた。
更に朝になれば庭では鳩ぽっぽが交通事故を起こし、末っ子は目には見えないお友達と仲良く会話を始める始末。
24時間体制で家族に恐怖を撒き散らすわけあり物件の猛威に「このままでは家族が壊れてしまう!」と
悟ったキャサリンはオバケの専門家であるエドとロレインを館に招く。

            
                
この家でかくれんぼをするといつの間にか参加者が増えるのだ。 
遂にとらえた。これがオバケの姿だ!! オバケも怖いが目隠しかくれんぼも怖いぞ!!

エドとロレインの調査によって、この館には大量のオバケがゴロゴロしている死霊館であることが判明する。
しかも、オバケはかなり激怒しているようでペロン一家を皆殺しにする恐るべき抹殺計画を秘かに練り上げており、たとえ館を捨てて逃げてもしつこく家族に付きまとう所存とのこと。
二人は「一家を救うには悪魔祓いをするしかない!!」と判断するも、その許可を得るには動かぬ証拠が必要となるので、エドは館中にカメラを設置する。
オバケはキレるとその姿を現す習性を熟知しているエドは部屋中に十字架を置き、オバケが溜まっている地下室に殴り込み
やい! 出てこい!! 悔しかったら何か音を立ててみろ!!」とオバケをコケにする、シンプルであるが即効性のある威嚇作戦を開始。



エドとロレインが繰り広げる二人三脚のお祓いシーンが僕は凄くお気に入りでしてね。
除霊中はお互いが常に相手の体のことを気にかけていて、エドが「君は離れていろ。ここは僕に任せて!」って言うとすかさずロレインが「私たちは夫婦よ!あなたを一人になんかしない!!」と言って寄りそい二人で力を合わせて「ドリャ――!!」とオバケに立ち向かう姿は本当に素晴らしい!!
僕も映画館で夢のあるデスマッチをたくさん観てきましたが、おしどり夫婦VSオバケがこんなにも胸を熱くするものだなんて…。感無量です。
だけど、オバケだって負けてはいません。エドとロレインですら震え上がらせる程のとんでもない陰気な仕返しを繰り出すオバケの底力はとにかく恐ろしく、物語は家族の絆と夫婦の愛がオバケと激突する壮絶な結末に流れ込み、信じられないかもしれませんが鑑賞後は涙が頬を伝ってこぼれ落ちていますよ。


              

またね。