『クロニクル』―I can fly―

                     
                     

日本公開が随分と遅れちゃいましたが、遂に観たぞ!! 映画『クロニクル』
この『クロニクル』は無名の監督、地味顔の俳優、低予算を総動員させた映画です。
ですが、この予告を観て「まるで大友克洋先生の世界だ…。」と息を呑む方がいるかもしれませんが、それもそのはず。
この映画を撮った監督ジョシュ・トランク大友克洋先生の『AKIRA』に多大な影響を受けたとのこと。これは海外から日本に贈られたラブレターです。
ボンクラ男子としてこの映画を避けることなど不可なのです。


主人公のアンドリューは根暗でモヤシで友達0人、趣味はビデオカメラで盗撮、そして童貞。学校では廊下を歩いているだけで、よってたがってバカどもにコケにされ、安全地帯である家に帰っても、昼間から酒をあおる無職の父親に殴り倒され、アンドリューの唯一の理解者である心優しい母親は重い病で寝たきりの生活。出口の無い日々にもがき苦しむアンドリュー。
その日も「この盗撮野郎!!」と知らない奴に可愛がられ1人メソメソ泣いていると、そこへクラスの人気者 スティーヴが現れ鼻息を荒くして
すげえモノ見つけちまったよ!! ちょっと来いよ!!
いとこのマットも加わり、辿り着くとそこには謎の深い穴。
何故そこに穴があるのか? それは探検するためだ。穴とは男の探究心を刺激する秘境。穴が男たちを呼ぶのではない、男たちが穴を呼ぶのだ。
まぁ、どーでもいいが

バカ三人組は穴の奥深くで青白い神秘的な光を放つ物体に遭遇する。
それに触れた途端、ビデオカメラの記録は途絶える。
再びビデオカメラの前に現れる3人は念力が備わっていた
スパイダーマン』のピーター・パーカーも彼らと同じで学生の分際で超能力を手にしたが、ピーターは真面目で責任感の強かった為、力を良いことに使ったというのは周知の事実。だが、今回超能力を手にした奴が揃いも揃ってバカだったため、「大いなる力には、大いなる責任が伴う」などシカトして3人は念力を無駄遣いして無責任の限りを尽くす。

               
「この力で僕らは何ができるんだろう?」と大した頭も無いくせに神妙な顔つきで考え込む3人組が導き出したアンサーはスカートめくりだった。エラい!! 
学業をすっぽかして念力強化に余念の無い3人は近所のオモチャ屋でクマのぬいぐるみに念力を注入して、即席テッドを誕生させ罪の無い幼女にトラウマを植え付け、男たちの野望は遂に大空にまで進出。


念力を手にしたバカは空をも飛ぶ!! スーパーマンのバーゲンセール状態。

ティーヴは陰気な性格のアンドリューを心配してある提案をする。
「この力をみんなの前で披露するんだ!! そうすればお前は人気者だ! 童貞だって卒業できるぞ!!」
「ええ〜。そ…そうかなぁ〜。じゃぁ…。」
友情パワーに背中をされたスティーヴは今までとは違った自分になるため、学校の文化祭で力の限り、浅知恵絞った念力一発芸をお披露目する。
誰もがその予想外過ぎる光景に息を呑み、悲鳴と喝采が巻き起こり、クラスの最下層にへばりついていた男はその日、シンデレラの高みへと到達したのだ。
周囲の視線を独り占めして気持ち良さそうにするアンドリューであったが、初めて自分に興味を持ってくれた女の子を前にして大失敗をしてしまう。
アンドリューがやらかしたバカはあっと言う間に学校中に知れ渡り、シンデレラは一夜にして最下層のさらに下へと蹴落とされ、より一層深刻化した家庭環境が彼の心に追い打ちをかけ、内側から湧き出る力によって崩壊した理性は想像を絶するアンサーを導き出してしまう。

見ての通り僕は怪しいモノが大好きなんですよ。怪人や怪獣や宇宙人、そして超能力。
僕は藤子・F・不二雄先生の『エスパー魔美』から超能力(魔美たんのフルヌードも含め)の素晴らしさを叩きこまれた人間の端くれですから、今回の映画はどーしても観たかったんですよ。
結論から言えば、夢のある力が大量破壊兵器と化す、とてつもなく哀しい映画だった。(今思い出しても哀しくなる…。)

やっぱり、人間にとって超能力は過ぎたる力なのかもしれませんよ。責任感が薄れますからね。

            
またね。