『フッテージ』-悪魔も映画が好きだった-

安めのホラー映画の仕事で経験をチャージし、遂に花開いたのが2005年。
実話をもとに撮られた映画『エミリー・ローズ』が世界中を震撼させた。調子に乗って2008年、傑作SF映画『地球の静止する日』をリメイクしたものの、大して面白くなかったので世界中を微妙な気持ちにさせたスコット・デリクソン監督が帰ってきた!!
仕事に行き詰ったら、原点を見つめ直せという中小企業の経営理念のごとく、今回スコット監督がチャレンジしたのがこの『フッテージ』。
もちろん、ホラー映画である。

実際に起きた冷酷な殺人事件ばかりを扱うノンフィクション作家エリソンがこの物語の主人公。彼の活動にカンカンになる人もいたが、彼は文字を通して多くの人に事件の真相を読んで知ってもらうことは、正義である力強く信じていた。
そんなジャスティス作家も歳を重ねていくうちに純粋に金儲けと名誉のことばかり考え、過去の栄光にすがるようになってしまう。
そして、一攫千金を夢見て殺人事件をチョイスする不謹慎作家が今回選んだのは、幼い娘が失踪し、残りの家族は裏庭で全員首吊りをした謎の事件。人間的にはどーかと思うが仕事に関しては一切手を抜かない仕事熱心なエリソンは、手始めに実際に事件のあった家に家族とともに引っ越しを開始。さすがはプロである。最愛の妻と子供たちには事件のことは一切知らせぬまま、シラを切り続け悪夢の新生活は幕を開ける。この異常なまでの情熱を別の職業で活かせたら、それなりに良い人生を送れたと思うのだが…。


ある日、エリソンは屋根裏に眠る映写機と複数の古いフィルムを発見する。
フィルムの中身を確認してみると映し出されたのは、この家の裏庭で起きた家族の首吊りの瞬間を収めたド迫力映像だった。
「こんな映像、シラフじゃ耐えられん!!」とエリソンは酒をドンドン飲んで、全力で顔を引きつらせながら他のフィルムも確認してみると、別の一家惨殺事件を記録した、これまたシラフじゃ耐えられない映像の大洪水。(特に「芝刈り機殺人事件」はドギツイ。)
酒の力を借りてしても、残酷シーンが映るたびに女の子みたいな声で椅子からピョンピョン飛び上がるエリソンが可愛いこと!!萌え!!
観続けているうちにエリソンは全てのフィルムには必ず、おっかない顔をした人物が映り込んでいることと、事件後、必ず子供だけが姿を消していること、そして謎のエンブレムに気付く。
だが、こんな物的証拠を何のために残したのだろう……。

エリソンが事件の調査を始めて間もなく、家の中では夜な夜な響く物音(何故か嫁には聞こえていなかったようで、彼女はいつもグーグー寝ている。)や突然の停電、息子の謎の発作に娘の不気味なラクガキ。明らかに何かとてつもないことが起きようとしている…。
だが、エリソンは怪奇現象を欠陥住宅程度にしか感じず、仕事を続行してしまう。

ある日、彼のファンだと公言する副保安官が「あなたの調査に協力させて下さい!!」と押し売りにやって来たのだ。奴の狙いはエリソンの本に協力者の一人として記載されることだった。
この暇人副保安官が意外にもデキた奴で、彼の知人の協力によってフィルムに映っていたエンブレムは、太古の昔から子供の魂を喰らって生き続けるロリコン邪神を示すものだと知る。事件が核心に近づくに連れ、家の中で起こる怪奇現象も急速にひどくなっていく。
さすがのニブチン嫁も「ひょっとして、この家って…」と感づき出しエリソンを問い詰める。もうこれ以上隠し通せないと覚悟したエリソンは正直に話すとニブチン嫁は大爆発。(全編に渡って陰気な雰囲気が漂う中で、この夫婦喧嘩のシーンは唯一の爆笑ポイント)
このままでは、あらゆる意味で危険だと悟ったエリソンは、家族を連れて夜逃げを決行するのだが……。

物語が後半に突入すると、いままで丁寧に積み上げてきた展開を全部パーにしてファンタジーな方向に急ハンドルを切り始め、この急展開を受け入れられるかどうかが本作の評価の分かれ目となると思うが、今まで行方不明になっていた子供たちが束になって登場するシーンは、一瞬呼吸が止まるぐらいインパクトがあるので気になる方は、ぜひとも劇場でご堪能して頂きたい。
本当にビックリしますから!!