『ハッシュパピー バスタブ島の少女』-黒いもののけ姫-

上映開始早々、パンティーに農業用長靴という画期的過ぎる組み合わせの下半身で登場した黒い少女がヨチヨチ歩き回るオープニングからして異常なこの映画。
しかし、地球温暖化、環境破壊といった地球規模の悩みと頑丈な親子愛を組み合わせた
不屈のファンタジー映画。それがこの『ハッシュパピー バスタブ島の少女』なのだ。

物語の舞台となるバスタブ島には学校も会社も存在しない。
常にお祭り騒ぎのここは神が無職に与えた現代の楽園といっても過言ではない。
しかし、この楽園には巨大な危機が迫っていた…。

主人公の黒い少女ハッシュパピーと黒いお父ちゃんウィンクは家畜まみれの家で暮らしていた。
ウィンクは神妙な顔つきで自然を切り開いて作られた工場を眺めて、地球が日々壊されていることを娘に伝え、ハッシュパピーもそれを信じていた。
ある日、ハッシュパピーは猫缶を鍋で煮詰めてお父ちゃんの帰りを待っていた。

帰ってきたウィンクの様子はいつもと違い殺気立っていた。お父ちゃんに八つ当たりされて機嫌を急激にななめにしたハッシュパピーは自身の部屋と猫缶の入った鍋をガス爆発で吹き飛ばす破壊的な反抗期を披露する。部屋を全焼したその日の夜、バスタブ島に巨大な嵐が襲来し猛威をまき散らし始めたのだ。
ウィンクはハッシュパピーに「浸水して水が屋根まで上がって来たら、屋根をぶち抜いて脱出するぞ!」と難易度の高い脱出法を提案していた頃、バスタブ島から遠く離れた場所で深い眠りについていた黒い巨大なイノブタの群れが目を覚まし、バスタブ島めがけて走り始めたのだ。
話を戻してバスタブ島では、嵐に怯えるハッシュパピーを安心させるためウィンクはヘルメットをかぶり、ショットガンと酒瓶をもって「嵐め!俺が相手になってやるぞ!」と正気とは思えない言葉を叫びながらショットガンを乱れ撃ち。その狂気を帯びた姿はもはや父親ではなかった。ウィンクの頑張りも嵐には届かずバスタブ島は一夜にして水没。

翌朝、親子は車で作った船に乗り込んで、バスタブ島の上にできた大きな水たまりの上を漂っていた。
そこでウィンクは今後のことを考えて、ハッシュパピーに魚を殴り殺して捕まえる実用性の低いサバイバル・スキルを教え始めるのであった。バスタブ島の人達は故郷が沈んだとしても、大好きなこの土地から離れようとはしなかった。
そんな彼らのもとに政府のヘリコプターが強制退去命令を下しに現れ、島民たちを難民収容所へ送ってしまう。収容所でハッシュパピーはお父ちゃんの命が消えかけているという悲しい事実を知らされる。
バスタブ島に帰ろう。
そう決意したハッシュパピーは仲間と協力してお父ちゃんを収容所から連れ出し、バスタブ島目指して歩き出す。辿り着いたバスタブ島は泥と動物の死骸で埋もれた楽園とは程遠い土地に成り果てていた。
そして、精神的にいっぱいいっぱいな島民たちの前に黒いの巨大イノブタの群れが、その雄々しい姿を現す。そのとき、島民たちは、そしてハッシュパピーの選んだ道とは?