『百日紅 〜Miss HOKUSAI〜』


原恵一監督最新作と言うだけで、何が何でも観なければいけないような…そんな義務感が芽生えてきますが、今回の『百日紅』は日本が世界に誇る絵師、葛飾北斎とその娘たちと近所のバカと可愛い犬との交流を描いた1本でした。
僕も絵を描くのが好きだから、いつも以上に鼻息を荒くして劇場へ足を運んだら、思っていたのとはちょっと違った内容だった。
それは、もちろんいい意味で。


時は江戸。
北斎とその娘、お栄はゴミ部屋と化した貸家で日夜ダラダラしながら創作活動に勤しんでいた。
そこへ酔い潰れた近所のバカやら、どこからか迷い込んできた子犬までやってくるから、そこはもはや無法地帯。でも、そんな不審者や野良まで受け入れちゃう人情味がまた心地良い。余裕がある。玄関に水の入ったペットボトルなんて置きませんよ。

で、物語はこれが何というか、凄く行き当たりばったり
熱心に絵を描き上げる話もあれば、吉原に出ると噂のモノノケを見にフラフラ足を運んだと思えば、今度は近所で起きた火事を観る為だけに全力ダッシュ

また別の日になれば、お栄が描いた男女の交尾中イラストが出版元から「お前は絵はエロくない!」とダメ出しされ、彼女はエロを学ぶため、ホモ相手に金を稼ぐ女装男子に処女を捧げようと映画を観に来た男性客にサービス。
このサービスシーンに登場する男娼も一度見たら忘れられない。
客を見送った後すぐにお尻を摩る男娼。やっぱり、お尻に規格外のモノを入れるのは良くないことがハッキリと分かるシーンです。このシーンだけでも資料価値はありますよ!!

そんな江戸に生きる人々を取り巻く日常と超常現象が、交互に、その間に四季を挟んで淡々と描かれていく。地味だと言われるかもしれない。
でも、各々のエピソードが良い味を出しているんですよね。後からジワジワ来るスルメのようなアニメだと思う。
子犬もドンドンデカくなっていく。


かつて原監督が手掛けた『河童のクゥと夏休み』に登場したオッサンとは一味違った魅力を秘めた犬と近所のバカ。
この犬が良い演技をするんだよなぁ〜。


むさい男たちの中に咲く一輪の小さな華、お栄の妹、お猶。
ぶっとい眉毛で男勝りな姉に対し、妹の方はしおらしく、ヘルメットみたいな髪型がチャームポイント。
生れつき目が見えない為、そのほとんどを室内で過ごしている。お栄は暇を見つけては彼女の手を握って町へと連れて行く。なかなか笑顔を見せないお栄もお猶の前では口元が緩む。いや、日本中の男子なら皆緩む。彼女の魅力を知ればロリコンでなくとも緩むはず。断言しよう!!