『マップ・トゥ・ザ・スターズ』

奇才!!
というか変人デヴィッド・クローネンバーグ監督の最新作「マップ・トゥ・ザ・スターズ」は、夢の都ハリウッドに潜む闇を鋭くえぐった大風刺映画である。
二軍以下に格下げされた女優ハバナと元人気子役のベンジーが新作の主役を勝ち取って、再びスターの座にカムバックしようともがく。これだけ聞くとハートフルな感じがしますが、そこは奇才の腕の見せ所。ただでは済まぬド変態節が炸裂し、物語はハートフルとは無縁な方向へとハンドルを切る。


ハバナの生態はとにかく身も心も下品。
変態セラピーに通い、50代の衰えた体に鞭を打って変態セックスにトライもするし、ライバル女優に不幸が舞い込めばお祭り騒ぎ。トイレでウンコする時、ドアは全開。オナラはブーブー連射とやりたい放題。人はここまで醜くなれるのかと不快になる。

一方のベンジーも親が必死こいて売り込んでいるのに本人は薬を貪って、頭の悪そうなセレブたちとウンコの話題で大いに盛り上がり、期待の新人子役が現れれば潰しにかかる始末。



そんな時にぶらりとやって来た謎の女の子アガサ。
体中にヤケドを負い、常ににやついた表情を浮かべる愛くるしい不審者。火事で母親を失ったハバナはヤケドを負ったアガサに運命的なモノを感じ取り、秘書として雇うことを決意するのだが…。



アガサを演じたミア・ワシコウスカはここ数年、その個性的な四角い顔立ちを最大限に活かして、キモいけどかわいい役を熱演する姿勢は、観ていて大好きになるし、今後も目が離せない。『アリス・イン・ワンダーランド』とかいう、普通の映画じゃ彼女の真の魅力は引き出せないのだ。
あと、ミアの日本語吹き替えは主に坂本真綾さんが担当している点も見逃せない。彼女のあの熱のこもっていない無機質な声がミアの演じる役といちいちマッチしていて、たまんないんだよなぁ〜!!(全て褒め言葉です。)

全編に渡ってドロドロした内容だけど、たびたびハバナの母親のオバケやベンジーのファンのオバケが現れるファンタジーな一幕が不思議な味わいを醸し出しているのも特徴。特にハバナの母ちゃんは、我が子に向かって
あんたには才能が無い!! 垂れ乳だし、穴が臭い!!」とこれまた下品な言葉で責め立てる。
しかも、セックス中だろうとお構いなしに現れて、嫌がらせだけして去って行く姿はもはや悪霊である。
でも、こうした不思議な要素が隠し味になって、鑑賞後の後味はそこまで悪くない。
それに地味な映画と思って油断していたら、オバケまで出てきたのだから、これは良い意味で期待を裏切る映画ですよ。