『泣く男』

今年も残りわずか。年末に向けて忙しい日々を送っている方も見えると思いますが、僕も今、多忙な日々で目が回りそうです。
観たい映画も上映終了間際の滑り込み鑑賞ばかり…。
言い訳にしか聞こえませんが、それ故に更新に著しい遅れが出始めてしまい、来てくれた方を微妙な気持ちにさせてしまったかも…と思うと…。本当にごめんなさい。
可能な限り前のめりな姿勢で楽しい記事を書いていこうと思います。頑張れ、自分!!
今回観てきた映画は『泣く男』です。

中国で殺し屋家業に勤しむ男ゴン(チャン・ドンゴン)はある晩、殺し目的でアメリカへ降り立った。ゴンは手際良くターゲットを瞬殺。ところが殺人マシーンの本能が過剰反応してしまい、偶然そこへ居合わせてしまった少女を撃ち殺してしまう。
罪の無い少女を殺してしまったゴンは自責の念に押し潰され、酒に溺れてグニャグニャになってしまう。だが、組織はグニャグニャになることを決して許さない。ゴンに喝を入れるため「お前が殺した子供の母親も殺して来い!!」と気の利かな過ぎるスーパー残酷なミッションを押し付ける。
こうしてゴンは少女の母親を抹殺するため韓国へと飛び立つのであった。

この映画は『アジョシ』(10)を作ったイ・ジョンボム監督の最新作なんですが、まず衝撃的なのが冒頭の少女殺しのシーン。『アジョシ』はド畜生に誘拐された少女を救い出す為に立ち上がったロリコン・ソルジャーの勇姿を描いた作品でしたが、今回はその反対で殺してしまう。『アジョシ』の少女よりも、かわいい子なのに。子供と言えど容赦無く殺害シーンを堂々と、しかも生々しく撮ってしまう韓国映画業界も凄いが、少女を演じたカン・ジウの撃たれたリアクションも凄くてね。
もしかして、この子は撃たれた経験があるのでは?」と思ってしまうほど。
胸が痛くなって涙が止まらなかった。日本が誇る最強子役・芦田愛菜ちゃんでもこのリアクションは越えられまい。

ゴンは予定通り母親の息の根を止めるために急接近。が、しかし、最愛の娘を失い自暴自棄となって、娘の記録映像が映し出されたテレビにへばり付く母親の姿を目の当たりにした時、彼の中でくすぶっていた罪悪感が大爆発。と同時に幼年期の哀しい思い出が蘇り始める。
ゴンが自身の母親に対して抱く深い愛情と憎悪。それは、母親に捨てられて心が死んだ日の記憶であった。

ゴンを演じたチャン・ドンゴンは、とにかく「目」が本当に素晴らしい。疲れ切った野良犬のような瞳でね。多分、韓国で最も悲惨な瞳を持つ方だと思う。ひょっとしたら、この世で最も悲惨な瞳かもしれませんよ。そこへ更に彼の哀愁漂う演技が加わったら、もう死に顔ですよ。生きているのか死んでいるのかも分からない。

母親抹殺を辞退して会社を裏切ってしまったゴン。激怒した会社はゴンのお友達の殺し屋軍団を送り込む。目的はもちろんゴンの抹殺。この殺し屋軍団が実に愉快な奴らで同窓会感覚でデスマッチを繰り広げたと思えば、今度はキャッチボール感覚でショットガンとアサルトライフルをブッ放して近所を恐怖のドン底に叩き落とす。

あと、個人的に胸にジ〜ンと来たのは殺し屋軍団のリーダーの存在。
彼はゴン抹殺を命じられていても、何とかしてゴンを救おうとする仲間思いのイイ奴でね。
この男同士の熱い友情が泣かせる展開へと繋がっていくんですよ!!

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イ・ジョンボム監督の偉業はここから始まった!!