『ドラキュラZERO』

ロボとーちゃん、ロボコップ、今、この世で最も熱いもの。それは「お父さん」!!
そして、戦うお父さんシリーズ第三弾はホラー映画界の大御所ドラキュラだった!!

吸血鬼と言えば年々ホラー要素は削がれ代わりに女子受け要素が増強されつつあるが、今回の『ドラキュラZERO』はドラキュラのモデルとなったヴラド3世を主人公にしているだけでなく、人質として過ごした過酷な幼年期からスタートして、ステキな君主であるのと同時に暴君。二足のわらじを履いて生きたことも漏れなく描いている。幼年期からと聞けば、まるで大河ドラマのように聞こえるが冒頭10分くらいで生い立ちは語られ、とっとと本編最大の見所である「吸血鬼にパワーアップして大暴れ」な展開へ。
実に親切である。

お話は15世紀。軍事国家オスマン帝国の皇帝メフメト2世は兵力強化の為にヴラドに「1000人の男子を差し出せ。」と脅迫。この申し出を断れば戦争になると賢者たちはヴラドに囁くが、大人が始めた問題に子供を巻き込むなど馬鹿げている。彼は内なるジャスティスに従ったが為に事態は取り返しのつかないことになってしまう。
もはや話し合いでは解決できないと確信したヴラドは、近所の山に住む魔物に力を借りに行ったが、なぜか魔物と契約するハメになってしまう。ちなみに予告では神殿のような場所で杯に入れた謎の液体を飲み干して契約しているが、本編ではド汚い穴蔵に住むド汚いホームレス(魔物)と嫌がらせじみた契約をする形になっている。


契約したヴラドは強大な魔力、素手で岩をも砕く馬鹿力、瞬時に傷を癒す治癒力、プレデターのようなサーモグラフィーでの索敵…つまり、ほとんど無敵になってしまったわけだ。体をコウモリに変えて自在に飛び回る「ドラキュラ・ダッシュ」(勝手に命名)やコウモリで巨大な渦を作って敵にぶつける必殺の「ドラキュラ・ハリケーン」(勝手に命名)を駆使して、たった一人で大軍団に戦いを挑む。

当然、人間ごときが敵うわけがないので戦場はドラキュラ無双となるが、それは夜間だけの話。日の出ているうちは人間以下のスペックに下がってしまう。わずかに差し込む光にすら怯え影踏みしながら逃げ惑い、人間の生血をすすりたいという吸血鬼としての欲求がエロガキの無限性欲のごとく湧き上がり爆発寸前。


人間と吸血鬼の狭間で苦しむ姿からはホラー要素は微塵も感じられないが(だから『ドラキュラZERO』なのか?)血よりも濃い絆で結ばれた家族を守るために、魔物に魂を捧げた男の勇姿に僕は涙を禁じえなかった。あと、この映画を作った連中は大ヒット間違いなし!! と睨んでいたようだが、映画はコケてしまった。多分続編は無い。

くどいようですが、僕がこの世で(略)
とにかく観て!!