劇場版 零〜ゼロ〜

男子なら死ぬ前に1度で良いから見たいと願うもの、それはオバケと女子寮!!
僕らから切っても切れないそのピュアな願望をテクモの大ヒットホラーゲーム『零 zero』にドッキング!!
原形をとどめぬ程に変わり果て、怒り狂ったファンにコテンパンにされた本作。
だけど、コケするのはまだ早い!! 何故ならば、この映画はオールドなホラーファンにとっては最高のご褒美なのだから。

開始早々に『サスペリア』(77)そっくりの音楽が鳴り響いたと思ったら、物語の舞台は全寮制の女学校とどこまでも『サスペリア』。ところが、『サスペリア』だったら次々と女学生が血だるまと化すが、本作で描かれる事件はなんと神隠し。女学校の神隠し事件と言えば誰が何と言おうが『ピクニックatハンギング・ロック』(75)なのだが…これって意図的にやっているのだろうか?
あるいは、僕の心に根付く病が見せた幻か?
監督の狙いが無性に気になったので、パンフレットを買って読んでみると…やっぱり意識して撮っていたとのこと。さらに『フェノミナ』(84)なんかも隠し味に使っているようです。傑作ホラー映画をマジカルバナナ方式で繋いでいく貪欲な演出は見事ですが、結果としてそれがゲームファンをカンカンにさせてしまったのも事実…。でも、男子禁制の美少女ホラーが好き過ぎて、友達からロリコン扱いされた哀しい過去を持っている方がこの映画を観れば、「俺が信じてきたものは間違いじゃなかった!!」と報われるんじゃないかな。多分。
そんな訳なので、今回は原作ゲームを無視して元ネタになった美少女ホラー映画を織り交ぜつつ書いてみようと思います。

山に佇むこの女学校ではその昔、女の子同士がスペシャルな関係に到達し死後も結ばれたいと心中する事件が起きる。
その後、この事件を教訓としない女学生たちは、大人たちの目を盗んで百合ワールドを拡大させていった。そして現在、この女学校でミステリアスな輝きを放つ少女 アヤはクラス中からの熱い視線を独占していたが、突然、引きこもりになってしまう。その頃から女子生徒が次々と神隠しに遭い始める。アヤがみんなに呪いをかけ散らしていると根拠の無い噂が蔓延し、ヒステリーを起こした生徒は暴徒化。そんな混沌の渦の中からアヤを救おうと立ち上がったクラスメイトのミチは、百合パワーで事件の真相を解明しようと走り出した。

本作に多大な影響を与えたのは間違いなく『サスペリア』。
女学校で起こる謎の連続殺人事件を描いたイタリア産ホラー映画。下品が売りの米国産ホラー映画と違って美術面が強化されているのが最大の特徴。その差はウンコと宝石ほどにかけ離れている。色彩豊かな豪華セットの中で女優陣が俳優人生を投げ売って演じる壮絶な死に様は今観ても衝撃的。もちろんこの映画に百合要素など無い。

こちらは『サスペリア』で使われた名曲。『劇場版 零』ではこの名曲にそっくりな曲が一度ならず何度も鳴り響く。サントラが出たら聞き比べてみたい。




女学生が山中で神隠しに遭う設定は『ピクニックatハンギング・ロック』からの引用。
世界名作劇場を彷彿とさせる世界観に心を和ませていると突然、ブスが大絶叫!! 何度観ても心臓に悪いこの予告。
美少女達は山に吸い寄せられ、ブスは残されるというあらゆる意味で無慈悲な惨事に生徒たちは狂い出し学級は崩壊寸前。事件は最後まで未解決な上に校長は山から落ちて死亡。
ブスもババアも受け付けない、神秘的なロリコン山の脅威に学校側は成す術もなく自動的に廃校となった。


フェノミナ』は虫と交信ができるナウシカな美少女が殺人事件を解決していく夢のあるお話。
女の子たちが汚物の溜まった水に放り込まれる部分に影響を与えたと思われる。
フェノミナ』では大量のウジ虫(もちろん作り物)が発生した水溜りで溺れるシーンがあるんですが、『劇場版 零』では家庭排水垂れ流しのドブ川とか水草が浮くド汚い池に女の子たちがポイポイ捨てられるシーンが登場する。
汚いものに美少女を加えることによって、美は一層引き立つのだ。じゃあ、肥溜めに美少女を放り込んだらどうなるのだろう?
いや、それは既に別の映画で実証されていたなぁ。

フェノミナ HDリマスター版 [DVD]

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ゲーム版とは違うけど、何かこう…カルト的な人気が出そうな気がしないでもない本作。観ずに終わるのはもったいないですよ。