猿の惑星: 新世紀-刃向え!超エテ公 コバ-


脳ミソがパワーアップした猿たちによる独立運動、地球規模のウイルス感染…あの悲劇から10年。
猿は森で集落を築き、生き残った人類はボロボロの商店街に立てこもっていた。

そして今、人類は再び絶滅の危機に瀕していた。商店街の生命線である電力が底を突きかけていたのだ。商店街が死ねば人も死ぬ。人類は電力を得るため、放棄された発電用ダムを再稼働させようと目論むも、ダムは猿が支配する森のド真ん中。
猿の代表であるシーザーは修復作業の為にやって来た人類との間に芽生えた友好関係を共存の懸け橋にしようと大勝負に打って出た!!

しかし、共存に異議を唱える猿もいた。彼の名はコバ。
人間の愛に抱かれて育ったシーザーと違い、人間どもの実験動物にされた哀しい過去を持つコバにとって、シーザーの掲げるこの生温い思想は傷口にキンカンを塗り込まれるような…つまり苦痛極まりないものでしかなかったのだ。

猿の惑星』と言えば人類がやらかしてきた社会問題を隠し味にする巨大風刺映画でもある。
必死こいてダムを手に入れようとする人類とそこから追い出そうとする猿との関係は、何だか日本と中国との間に起きた、島を巡る領土問題みたいだし、人間どもに利用され骨の髄までしゃぶり尽くされた悲劇の猿 コバは多分、天才!志村どうぶつ園』のパン君がモデルだと僕は踏んでいる。
まぁ、このブログでは社会的なことを議論することなど土台無理なので、コバについて書いていこうと思います。

人間と猿との全面戦争が描かれると公開前から話題を呼んでいましたが、実際はシーザーとコバに重点が置かれた物語でした。
2011年から動き出した新章『猿の惑星』は「何故、人類は猿の奴隷になったのか?」 その起源を描くと同時に旧『猿の惑星』の名言や同名のキャラクターが登場したり、新しいファンの獲得だけでなく、オールドなファンにすり寄った配慮も万全であった。


今回の新章第2弾『新世紀』では「猿は猿を殺さない」という旧作の名言が早々に登場し、これまたオールドなファンのハートを刺激するのと同時に「このセリフが出たってことは…」と、勝手に物語の結末を予想しちゃうと思いますが、予想通りのことが起きます
シーザーはダムを再稼働させるため、仲間の猿を現場に大量投下させて作業効率を上げていく中、「人間を信じるな!」と口を酸っぱくして主張してきたコバは、もはや口だけではシーザーを止められないと確信する。

コバは商店街に潜入して昼間っから実弾で射的ごっこをしているバカ2人(恐らくは共に童貞)を瞬殺し、銃を手に入れてしまう。銃を手にしたコバはシーザーの上に立ったと勘違いし、他の猿たちに今こそ戦いの時だと呼びかけるも偏差値の高いシーザーのようなカリスマ性溢れる演説が出来ないコバは、「俺に逆らったら、ぶっ殺す」と圧倒的な恐怖と暴力で支配する。

シーザーは猿の特技を最大限に生かした知的な戦い方を用いるが、コバの戦い方は小細工なしの正面突破のみ。堂々としていて実に男らしい。
ゲイリー・オールドマン演じる商店街のリーダー ドレイファスは「銃を手にしても猿は猿だ。」と舐め切った態度で待ち構えていたが、人間たちは我が目を疑った。相手は確かに猿だ。
しかも、バカみたいに正面からやって来た。だが、やって来たのは何百頭にも及ぶ猿の大洪水
黒いじゅうたんと化した猿軍団が雪崩込んで来たのだから、その衝撃は計り知れない。
両手にマシンガンを握り、馬にまたがる最終決戦仕様で突撃する狂気を帯びたコバの姿にさすがのゲイリー・オールドマンも腰を抜かす。
形勢逆転を狙って発進させた装甲車もアッと言う間にコバに奪われ、鬼に金棒ならぬ猿に装甲車と悪夢のような光景だが、思わず席を立って「行けー!!」と絶叫したくなるほどカッコイイ!!
こうして狂った猿をパイルダー・オンさせた装甲車は商店街の門を紙クズのように打ち破るのであった。

本作でコバは悪者扱いだけど、彼の主張は全部が間違いでもないので憎み切れないんですよね…。悪いのは人間なんだし。
そう思うとね。パン君が両手に武器を握りしめ、相棒のジェームズにまたがってテレビ局に殴り込む日は近いかもしれませんよ。