思い出のマーニー〜少女に人生を捧げた少女〜

完璧!!
この言葉だけで今回の感想文を終了したい。
だって、僕の脳ミソではこの大傑作を文字で伝えることは不可能だから。でも…勇気を出して書こうと思う。

 この物語の主人公は2人。1人は都会で暮らす12歳の少女・杏奈。彼女はかわいらしい外見とは裏腹に性格はかなりダーク。学校だろうが家だろうが、場所を選ばずして孤立。それは長きに渡って続く杏奈を取り囲む複雑な家庭環境が原因であった。さらに喘息が追い打ちとなって彼女の体はギリギリの状態。
 ある日、喘息の療養のために親戚の居る田舎へ少しの間、お泊りすることが決まり、これで都会のしがらみから解放される!と思ったのも束の間、近所の下品な田舎っぺと仲良くしろだの、村の祭りに参加しろだの、全く空気の読めない親戚の計らいで都会以上屈辱の味わう杏奈ですが、唯一心ひかれたのは、入り江にひっそりと建つボロボロのお屋敷。その光景は遂に夢にまで現れ、しかもお屋敷の窓には謎の女の子が。こ、怖い!!
カッと目を開き目覚める杏奈。おねしょを期待したが、そんなシーンは1秒も映らなかった

 療養目的で訪れたのに猛スピードで具合が悪くなる中、友達面して近づいてきたブスがズケズケと杏奈の心に踏み込んだことが起爆剤となり、杏奈は心は大爆発。全てを投げ出し、大粒の涙を流して自暴自棄となった、まさにその時、玉肌で綺麗な金髪をほしいままにする少女が現れる。その少女こそが、夢で見たお屋敷の窓に映る少女であり、この物語のもう1人の主人公・マーニーであった。

 ネグリジェ1丁。しかも素足。説明する必要は無いと思いますが、ネグリジェと素足は絶妙なバランスで成り立っている。全身を柔らかな生地で包みつつも、足首だけは産まれたままの姿。それは清楚であり官能的。一致することの無い言葉を合わせ持つ、それはそれは味わい深くも心くすぐる奇跡の産物。食べ物で例えるなら、炊き立ての白いご飯と塩の効いた漬物と言っても過言ではない。つまり、最高なのだ!!

 初対面であるのに遠慮無しで接近してくるマーニーに杏奈の思考は停止するも、何故だか安心できる心地良さで頬は赤らんでいた。
もちろんマーニーはあのボロ屋敷の娘であるが、お屋敷は夜になればその姿をガラリと華やかにリフォームし、セレブ共が束になってドンチャン騒ぎする欲望の館へと変貌する。一体どこまでが現実でどこまでが夢なのか境界線が全く見えない展開で観ているこっちはボーゼンとしてしまいますが、そんなことなどお構い無しに杏奈とマーニーはこっそり夜中に密会してピクニックに出かけたり、キノコ狩りをしたり、クソババアを面白半分で閉じ込めたりとヤンチャの限りを尽くし、『小さな悪の華』(70)からいかがわしい部分を全て抜き取って、代わりに大量の砂糖菓子を詰め込んだような甘い関係を育んでいく。

 マーニーばかりに目が行きそうですが、杏奈も忘れてはいけない。前半は無愛想で人を寄せ付けないハリネズミだが、マーニーに出会った瞬間、ハリは抜け落ちフサフサしたブルネットの髪が魅力的な少女に生まれ変わる。杏奈のマーニーに対する感情は憧れから友情に変わり、友情は愛に開花して行く過程は幻想的であり、どこかマヌケ(褒め言葉)である。お酒をジュースと勘違いして口にした杏奈は目を回し、目が覚めると「マ〜ニ〜。さっき仲良くしてた男は誰よ〜。」とほろ酔い気分でマーニーに絡んだと思えば、夜風に当たって酔い覚ましのダンスを踊り始める二人。そんじょそこらの深夜系アニメでは、お目にかかれないような萌えの大連打に君は耐えられるか?

 ところが、甘美な時間は突如として終わりを告げる。マーニーはその小さな体で杏奈以上の苦しみと哀しみを背負い込んでいたことが明らかとなる後半。
物語の方向性は「お姫様が命がけでお城に囚われたお姫様を救い出す」展開へとハンドルを切る。望んで得たわけではない家庭環境と幻想が入り混じった世界で2人が紡ぎ出したひと夏の思い出は、レリゴー以上に心に沁み渡る永遠のラブ・ストーリーだ。

小さな悪の華 [DVD]

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↑本作とは何一つ関係ないけど、何となく紹介しておきます。
黒髪の少女と金髪の少女が、二人して僕の口からは言えないようなことを押し付け合う倫理の限界に挑んだ問題作。その狂い切った内容ゆえに上映禁止となる国が相次ぐ中、何故だが日本では平然と上映されていた。日本に産まれて良かった!!