『ロボコップ』‐黒い刑事と黒い婦警‐

 

1987年に誕生した不死身の刑事ロボコップ
町の風紀を乱す男のタマキンをためらうことなくブチ抜く過剰なジャスティスとデリケートな心を同時に収納した超合金ボディの彼が帰ってきた。
そして僕は観た。そして、その内容に感激した!! そして、しんみりもした。
元祖ロボコップはその幼稚な設定とつり合いが取れないほどの強烈なバイオレント描写がポイントでしたね。おかげで公開当時、海を渡ってやって来た特撮ヒーローだと勘違いした何組もの親子が犠牲になった。


今回生まれ変わった『ロボコップ』には名物である人体を破壊する暴力は薄まったが、不足分はメンタルの破壊描写で補っている。それは近年のアメコミ映画でもよく見られる葛藤自慢なんですが、アメコミの場合はタイツを脱ぎ捨てればそれまでだけど、ロボコップの場合は違う。脱げないのだ。本作の主人公マーフィは謎の爆破事故で全身火傷。夫婦でダンスを楽しむ夢から目覚めたら、目の前には知らない奴らがこっちをジロジロ見ているわ、変なスーツまで着させられているわ。何だが分からんが、自分を落ち着かせながら「スーツを脱がせてくれ。」とお願いするも博士たちからは「それはスーツじゃないんだ。それに脚も切断しちゃったし。」と全く気の利かない言葉でなだめられ、マーフィの感情は大爆発。怒りの大脱走を計るも遠隔操作で意識を奪われてしまう。
追い打ちをかけるように博士はマーフィの腕と脚をプラモのようにパチパチ外し、胸のアーマーとヘルメットを外すとそこには生臭いモツと脳ミソがうごめいていた。生首とモツだけになったマーフィは涙を流しながら「殺してくれ…。」と悲願するも却下。とてつもない金額が君一人に注がれた。元を取るまで死ぬな。その姿はロボコップではなく人間モルモットであった。


研究施設から妻子が待つ自宅にテレビ電話で連絡する際、不安を隠せない妻を気遣うマーフィは、画面に体を映さないようにしながら「大丈夫だよ。」と最小限の会話を妻をなだめる。施設から出て妻子と数か月ぶりに再会を果たすが、そこには満面の笑顔は無いものの妻は夫を優しく抱きとめ、ロボとーちゃんの姿を目の当たりにした息子は目を皿のようにして思考停止。恐る恐る冷たい金属の体に触れ、もうどこにも行かないでと告げるも「とーちゃんの体はメンテナンスが必要だから無理だよ…。」と施設に帰宅。ケータイ小説が束になっても追い越せない巨大な哀しみを背負って、抗うつ剤を打ってでも出勤する姿に僕の感情は高ぶった!! 心に来るものがあった!!

僕も会社から来るストレスで胃に大ダメージを負いながらも出勤していた辛い時期がありましたからね…。
だからロボのことが他人事には思えなかったんです。まぁ、マーフィに比べれば100万分の1以下の内臓破損率ですが、それでも上映中、心の中で「負けるな!!頑張れ!!」ってずーっとロボに声援を送っていたよ!!

今回の『ロボコップ』で話題になった真っ黒いボディ、真っ黒いバイク、真っ黒い二丁拳銃、真っ黒い相棒。
相棒の人種変更は別としてロボに追加された要素は、過去に作られたアニメ版、TVドラマ版の設定から受け継いだものだそうですが…本当にそうなんでしょうか?
誰も口にしないので、僕がこの場を借りて言わせて頂きますと、1996年に作られた『デモリショニスト』という映画があるんですが、多分、真の元ネタはこの映画だと思うんですよ。





                       




捜査中にドジ踏んで死んじゃった婦警が科学の力で蘇り、再び出勤するという『ロボコップ』の設定を豪快に引用した恥知らずな、僕の大好きな1本なんですが。
スーパー婦警が出勤時に着用するのは真っ黒のバトルスーツ、通勤は真っ黒いバイク、メインウェポンは二丁拳銃…何となく似てますよね?
あと、スーパー婦警は体を維持するために特殊な薬品を毎日打たなければ、アッと言う間にババアになってしまう。
犯罪だけでなく美容とも戦うアンチエイジングな姿に僕は惚れたんですが、内容は大して面白くないんだよなぁ…