銀河を救え!! ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー

もともとバカ向けのコミックヒーローたちが、枠を飛び越えて大スクリーンに進出すると「現実味」というこの手の作品には最も無縁な要素を加えることが当たり前の近年。いい歳した大人が恥知らずなスーツを着て闘う不気味なファンタジーに「現実味」を足したら、メンタル面は急速に弱まり、勝手に営業を停止する者まで現れた。

ヒーロー家業の苦しさを自慢して観客に媚びることが主流になりつつある中、金も超能力も学歴も無いが勇気と友情を武器にして戦う…
つまり、僕らが死ぬほど観たかったカッコいいヒーローたちが銀河の彼方からやって来たってわけだ!!
彼らの名は…。

その日、ピーター少年は病に苦しむ母親の最期に直面する。感情を抑え切れず天に向かって絶叫していると宇宙船がやって来て誘拐。
それから26年。地球を強制的に後にした少年は、誘拐した宇宙人たちによって、銀河を股に掛ける窃盗団の一員に成長。宇宙での生活にも慣れ、三十路を切った彼は「俺もそろそろ…。」と人生の岐路に立っていた。

ピーターは同業者を出し抜いて謎の秘宝「オーブ」を盗み出す。盗みたてのお宝を質屋にブチ込んで億万長者になろうと目論んでいた。
ところが、バチが当たったのか彼に舞い込んできたのは大金ではなく、殺し屋、口の悪いアライグマ、喋る木、殺人鬼だった。

友達もいなかれば、協調性も無い。あるのは膨大な犯罪歴だけ。これは人生真っ暗な連中が悪行から足を洗って「俺たちだってやればできる。 できるぞ!!」と根拠の無い理由で人助けを専門とする『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』に転職して、銀河を救う敗者復活戦の物語である。


↑こちらがガーディアンズの面々。

左から
『ガモーラ』
殺し屋ガモーラを演じたゾーイ・サルダナは、過去に『アバター』の宇宙土人や『コロンビアーナ』のクールビューティーな殺し屋を演じてきた。
この2つの役を足し算した答えがガモーラであるならば、ゾーイにとってトゥーマッチな輝きを放つ当たり役である。
ガモーラは幼少期に銀河征服を目論む大悪党サノスに両親を殺害された後、サノスの養女として生かされる屈辱に加え、体を戦闘用に改造され、汚れ仕事の専門家と成り果て現在に至る。オーブが悪党の手に渡れば、銀河が滅んでしまうことに気づいた彼女は組織を裏切りガーディアンズに入団することを決意する。
数々の戦いをくぐり抜けてきた改造戦士であっても恋愛には疎く、色目を使って近づいてきたピーターに対処できず取り乱す一幕も見受けられる。
青リンゴみたいな顔だが、本当は姫リンゴのような可愛い女の子なのだ。ちなみに彼女には萌え要素ゼロの義理の妹がいる。

『ピーター・クィル』
唯一の地球人。物凄く哀しい過去を背負っているが性格はネガティブを突き抜け、一周回ってポジティブに逆戻りしたかのように無暗に明るく、そしてスケベ。
スター・ロードの名で売り込むも誰からも覚えてもらえず、自慢のテクニックもガモーラの前では空振る始末。
そんな売れない芸人の下積み生活のような状態から銀河の守るガーディアンズの学級委員に大出世を果たすも、決して変わらないモノもある。
それは拉致される直前に亡くなった母親との思い出が詰まった最初期のウォークマンである。彼はこのウォークマンはずーっと持ち歩いているんです。
カセットテープから流れる歌がガモーラの荒んだ心を癒すシーンは、観ているこちらの心もジ〜ンとなる。

『ロケット・ラクーン』
遺伝子操作と改造手術によって高度な知能と二足歩行を獲得した喋るアライグマ。
一見するとハイパワーな風太君のようだが、そのキュートな見た目に騙されてはいけない。銃器、戦闘機、悪口のスペシャリストであり、目線は低いが上から目線と態度は背丈以上にデカく、極端に短気。
いがらしみきお先生の『ぼのぼの』に出てくるアライグマ君をも越えるド汚いガーディアンズのマスコット。
常に強気な彼だが自身の姿に強烈なコンプレックスを抱いており、チームメイトと大喧嘩した際に溜め込んでいた感情を吐き出すシーンはもらい泣きするほど壮絶。

『ドラックス』
本作に登場する悪役ロナンに妻と娘を殺害された彼は、復讐の為だけに生きる狂戦士に変貌。
ガーディアンズに入れば宿敵ロナンに辿り着けると信じていたが道草ばかり食っている面々に我慢できず、あろうことかガーディアンズを営業停止に追い込む失態をやらかし自身も死にかけが、チームメイトに命を救われる。仲間の大切さを知ったドラックスは更生し、ガーディアンズとして生きる道を選ぶのであった。
仲間の悪口を言う奴には、ためらい無く友情のロケットランチャーを発射する。

『グルート』
自立した大木。ロケットとは長年苦楽を共にしてきた相棒。
「アイ アム グル―ド」しか喋れないため、自己紹介しているようにしか見えるが、その時その時の感情を混ぜながら話している。性格はどこまでもマイペース。
誰に対しても優しく接するが、殺るときは徹底的に殺るメリハリの効いたニクイ奴。
そんな彼がクライマックスで見せるある決断はドラ泣きの5億倍号泣すること間違いなし!!


このように酷く哀しい過去を持ったキャラクターが4人もいるのに、まったく辛気臭くないのは全編に渡ってゴキゲンな懐メロがガンガン鳴り響くからである。
ム所にブチ込まれようが、勝ち目のない絶望的な戦いに向かう直前であってもお構いなしに流れるので、悲壮感は1秒も感じられないのだ。
なぜ、懐メロ? と思うかもしれませんが、答えは簡単。




これはピーターが肌身離さず持っているカセットテープに収録されている曲であり、チョイスしたのはピーターのお母ちゃんなのです。母ちゃんとの思い出がパンパンに詰まった曲をバックに息子が銀河を救うだなんて、泣かせる話じゃないですか。誰の曲かは知らなくてもここでは関係ありません。
聴くんじゃない。感じるんだ!!

ガンアクション、暴動、ドッグファイト、宇宙人、下ネタ、僕らが生きていく上で必要なものが縦横無尽に飛び交う本作の中で一番大切なのは、「辛い過去を背負っているのは、お前だけじゃないんだぞ! がんばれ! 絶対に負けるな!」と意地でも運命にしがみ付いて生きようとするその姿勢である。
何だが他人事とは思えない。その親近感を感じることが出来たら君もガーディアンズの一員だ!!

あと、エンドロール後に分かる人にしか分からないキャラクターが登場します。サプライズを通り越した酷いサービスだったけど、正直ちょっと嬉しかった。
まぁ、だからと言って「コイツ知ってる!!」とお友達や家族に自慢しても、絶対理解されないけどね。

GUARDIANS OF THE GALAXY

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